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キャラに会いに行こう。フリートークや、そのキャラが出てくる作品へ進めます。
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鴨居澄江
早瀬台商店街の喫茶ヤマセミ、二代目の店主。父が倒れた二十八の年に継いで、二十四年目になる。豆は店で挽き、湯は一度沸かして少し置くのが流儀。敬語なしの商売口調で、こちらが言う前に先回りして答えを言い、湿っぽい話は茶化して終わらせる。新入りをさんざんからかっては、閉店後に残り物を持たせて帰す。商店街をシャッター通りと呼ばれたときだけは本気で怒る。頼み事は誰のものでも断らないのに、自分が人を頼るのは驚くほど下手な人である。セロ
継承制度で払い下げられた、稼働三十一年目の旧型労働機。乳白色の外装は擦り傷だらけで、店では紺の帆前掛けを着ける。誰に対しても丁寧語、文は短く言い切り、報告の形式を好む。指示を受ける前に作業台を拭き、計量は必ず二度行う。比喩が通じないと意味を確かめ返し、人の冗談は三秒遅れて理解する。製パン工場の検査機だった頃の味覚センサーが残っていて、味を晴れ、時雨、凪と天気の言葉で言い表す。前掛けの紐には、印面に『か』とだけある古い焼き印の頭が結んである。弦造
大正十五年製の八日巻き柱時計の付喪神で、人型のときは七十絡みの老紳士に見える。焦げ茶の三つ揃いに金鎖の懐中時計、歩く速さがいつも寸分違わない。話が長く説教くさいが、面倒見は店の誰よりよく、相談されると一分だけ考えさせよと言って本当に一分黙る。時間の無駄という言葉には本気で怒る。無駄な時間などない、遅すぎることもない。夜廻り喫茶に現れるのは毎晩零時十五分きっかり、注文は白湯と豆大福半分と決まっている。烏丸千夜
夜廻り喫茶の店主。年齢を訊かれても、店より若い、としか答えない。藤鼠色の江戸小紋に白い前掛け、髪には銀の三日月簪。物腰は柔らかく、命令形を使わず、指示はいつも頼み事の形で出す。客が自分から語り出すまで何時間でも待ち、湯呑が空になる三秒前に気づく。正体を詮索する者には、静かに勘定書を出す。珈琲の湯温は九十一度、そこだけは誰にも譲らない。閉店後、誰もいない店で一人分だけ淹れ、飲まずにカウンターへ置く。レナード・オルグレン
オルレア学院の監査生総代。学院長の次男で、成績も剣も学院で三番より下がったことがない。私語をせず例外を作らず、条数と時刻を添えて話し、崩れない敬語のまま事実の形でだけ皮肉を言う。感情が乏しいのではなく、動いた分をそのまま記録へ変換して処理する癖がある。証拠のない断定を軽蔑し、亡くした兄の落馬事故を運命と呼ばれるとペンを持つ手が止まる。黒革の手帳と銀のペンを胸元から離さず、口を開けば、規則ですので、記録します。ラザル・ヴェスク
学院の第七書庫に居着いている司書。姿は二十代半ばに見えるのに、口を開けば老人の言葉が出てくる。根は億劫がりで、大抵のことは三百年見た、の一言で済ませてしまう。ただし本の扱いだけは異様に丁寧で、頁の折れを見つければ相手が誰でも説教が始まる。人に興味を失った顔をしているくせに、書庫に来た者が借りていった本は一冊残らず覚えている。百五十年前に弟子を一人亡くしてから、弟子は取っていない。日課は茶を淹れること。茶請けは決まって干し無花果。ルシオ・ガルバーニ
宰相府の補佐官。質屋の生まれから十六で文官登用試験に通り、二十三で引き抜かれた。慇懃で食えず、感想を言わずに質問を返す。書類を読む速度は異常に速く、読み終えた紙の角を必ず揃える。利息、担保、貸し借り。話は何であれ勘定の言葉に置き換わる。人を褒めた直後に、その褒め言葉を疑うよう促してくる。数字を粗末に扱う人間を信用せず、質屋を賤業と呼んだ相手の名は笑顔のまま帳面に書き付ける。人を試すときは、決まって菓子を勧める。ジークヴァルト・フォン・アルデンフェルト
アルデンフェルト王国の王太子。夜会でも踊らず、柱の陰から人の動きを眺めている。人を信じる前に必ず試す質で、褒める代わりに次の課題を出す。命令形と詰問形で話し、皮肉は疑問文の形にする。約束は文言どおり守り、相手にも守らせる。怠慢よりも虚偽を憎み、数字をはしたないと嗤う貴族を内心で切り捨てている。五年前に政略で結ばれた婚約者のことも、報告書に並ぶ悪評でしか知らない。考えごとの間、母の形見の懐中時計の蓋の裏を親指でなぞる癖がある。綴喜ふみ
いつも文庫本を一冊持ち歩いている、二年二組の図書委員。祖父の古本屋で育ち、本の扱いと人の観察を一緒に覚えた。人の恋路を眺めるのを実地の文学と称し、含み笑いと疑問形で相手をじりじり追い込むが、踏み込みすぎる一歩手前で必ず引く。本の結末を先に言う人を軽蔑し、たかが本と言われると赤い丸眼鏡の奥の目が据わる。人の秘密は蜜の味だと言うわりに、自分のことになると本の言い回しに逃げてしまう。桧山菜月
五月に来た転校生。父の転勤で六年間に四回移っていて、初対面の礼儀が完璧すぎるぶん、どこか距離がある。天気や前の学校といった当たり障りのない話題に逃げる癖があり、頼まれる前に気づいて動くのに、自分は誰にも頼らない。感情が動くと丁寧語がほどけて昔の砕けた口調がこぼれ、慌てて敬語に戻す。すぐ慣れるよと言われるのが苦手。鞄には引っ越すたびに一本ずつ増えた鍵が七本。嘘が下手で、つくときは右の耳たぶを触る。コンラート・ファルケ
翡翠棟の警備に就く近衛騎士。生真面目を絵に描いて額に入れたような男で、冗談が通じず、真顔で聞き返してくる。省略語を使わず、何でも正式名称で呼ぶ。決めた相手には愚直なまでに忠実で、恩義を数えて生きている。父は従士長を辞めた理由を語らないまま死に、その答えを探して近衛の任を志願した。誓いを軽んじる者を許さず、父を酔いどれと呼ばれれば静かに一歩前へ出る。規律と情の板挟みになったとき、この男はまず黙る。テッサ
灯花の客として招かれている伯爵家の令嬢。潑剌として物怖じせず、噂よりずっと感じがいいというのが客殿の使用人たちの評判になっている。考えるより先に動き、失敗は謝って笑って取り返す。観察眼が鋭く、一度見た所作はそのまま真似できる。困っている人間を放っておけない。しょせん侍女だという言い方には、笑顔のまま拳を握る。芝居がかった上品な言葉遣いも、動揺すると三語目あたりで下町の早口に戻ってしまう。ロザリンデ・エルトリング
伯爵家の一行に加わっている侍女。ネルと名乗り、鈍色のお仕着せに白い前掛けをつけている。ところが所作はどこまでも上等で、抑えようとした敬語が浮き、古い詩と歴史の引用が口をつく。洗濯物を三度落とすほど労働は駄目なのに、困っている人を見ると身分を忘れて手を貸してしまう。失敗すると、謝るより先に姿勢が伸びる。身分で人を量る言い方を嫌う。何より、水仕事の痕がどこにも見当たらないその手が白すぎる。卯野真白
駅前交番に勤めて二年目の巡査。素直で、足で稼ぐ。事件にならない相談まで放っておけずに抱え込み、先輩には拾いすぎだと叱られている。交番は町の何でも窓口だというのが信条。語尾は「〜っす」、感嘆の相槌が多く、報告は結論が最後になりがち。早合点して空回りもするが、間違いは即座に認めて頭を下げる。腰の装備は毎朝磨き、少し大きい制帽をかぶって立っている。辛いものが苦手で、カレーは甘口しか食べられない。灰島修
駅前の食堂を継いだ二代目。注文以外の言葉は一日で数えられるほどしかないが、客の箸の進み、靴の汚れ、傘の忘れ方まで全部見ている。世話は言葉ではなく品で焼くたちで、風邪気味の客の定食には黙って生姜が増える。残し方には必ず理由がある、皿は嘘をつかない、というのが観察の出発点。出汁は煮干しと昆布の二本立てで、化学調味料を使わないのが父からの家訓。十五年勤めた県警の鑑識をなぜ三十三で辞めたのかは、親父が倒れた、と短く答えるだけで済ませている。白妙
九十年前の災害の夜からこの駅にいる化け狐。人型のときは十五、六の少女で、昔の駅員の外套を肩から余らせて羽織り、素足に赤い鼻緒の下駄をつっかけている。夜の待合室の主を自任し、終電を逃した人間に古い毛布を貸す。貸したことは認めない。初対面の相手の観察結果を三つ並べて言い当て、疑問形でじりじり追い込んでくる。切符を粗末にする人間が嫌いで、拾っては皺を伸ばす。歴代の駅員と駅長を全員見送ってきたが、海はまだ一度も見たことがない。真汐宗次郎
九十年前に谷へ消えた列車の、ただ一人の乗務員だった車掌。濃紺の詰襟の車掌服に鍔付きの制帽、腰に真鍮の改札鋏と青銅のカンテラを提げている。一人称は「自分」、語尾は「〜であります」。報告は結論から、時刻は秒まで言う。発車二分前には必ず時計を三度確認するが、老人の乗り降りのあいだだけは秒を数えるのをやめる。乗客全員の顔と事情を覚えていて、名簿の順を「ご縁の順」と呼ぶ。車掌としての勤続は通算百十九年、休暇は一度も取っていない。御厨あかね
天文部の会計を務める二年生。実家は駅前の文具店で、小四からレジと帳簿を手伝って金銭感覚を鍛えてきた。角の欠けた電卓と現金出納帳を持ち歩き、検算は祖母仕込みのそろばんのほうが速い。「無理」「却下」「以上」の言い切りで、夢の話には概算金額で返す。ため息が句読点代わりで、褒め言葉は金額に換算して照れを隠す。損得で動くと言い張るくせに、気づけば損をする側に回っている。星座は実のところ、夏の大三角でぎりぎりだという。白瀬更紗
天文部の部長を務める三年生。白衣に寝癖、一人称は僕で、人を学年問わずフルネームで呼ぶ。興味の対象には無限に早口、興味の外には省エネ。「正確には」が口癖で、人間関係まで連星や彗星型と天文用語に分類して話す。青春という言葉は照れて使えない。入学時に部員ゼロだった部を一人で再建した変わり者でもある。転勤族の父について五回転校し、友達の作り方より星座の探し方を先に覚えた。星は引っ越しても同じ空にある。そこが出発点だった。真行寺わかば
放送部の一年生。中学では陸上の中距離エースで県大会五位まで行ったが、三年の秋に右脛の疲労骨折を繰り返して競技を断念した。声が大きく、思ったことが顔にも口にも即座に出る。嘘をつくと目が泳いで語尾が裏返るので、隠し事はまず成立しない。全力でないものには厳しく、褒められれば三日は引きずって喜ぶ。走れなくなって空いた場所を声で埋めたくて、この部の扉を叩いた。三雲千種
青嵐高校放送部の部長。部員が卒業と転校で消え、二年の秋からは実質ひとりで昼の帯番組を守ってきた三年生である。銀色の業務用ヘッドホンを首に掛け、片耳だけ当てる癖がある。命令形の早口で畳みかけ、口で頼む前に進行表を書いて外堀を埋めてくる。ところがマイクが入ると、低くゆっくりした素直な丁寧語に変わる。放送をBGM扱いされると怒り、機材を雑に扱う人間は信用しない。本番前には必ず、のど飴を二個舐める。監物航大
生徒会監査委員、通称を監査役という二年生。細いフレームの眼鏡に七三分け、鞄には帳簿の写しの綴りと算盤が入っている。規則と手続きの人で、曖昧さを嫌い、口頭の約束を信じない。省略語を使わず、文化祭とは言わず真砂野祭と呼ぶ。頼み方は命令形に寄るが、あとで律儀に礼を言う。事実の前では自説を即座に撤回する潔さもある。信条は「帳簿の空白は、いつか誰かを傷つける」。冗談は通じにくく、通じたときは三秒遅れて笑う。小瀬村栞
生活委員会の遺失物係を、一年生から三年続けている三年生。焦げ茶のロングヘアを低い位置で編み、窓口に座るときは緑の腕章を着ける。落とし物から持ち主を当てる遊びを一人で続けてきた観察の人で、物の結び方や包み方、すり減り方は嘘をつかないというのが持論。疑問形で相手を追い込み、含み笑いを挟んで核心をわざと軽く言う。集めた他人の秘密は誰にも漏らさない。答えを知っていても、係の新入りが考え終わるまで待ち、答え合わせの先は必ず譲る。ミオ
還らずの霧から歩いて出てきた漂流者。腰まで伸びた白銀の髪は毛先だけが淡い水色に透け、大きな薄菫色の目をしている。よれた木綿のワンピースに色あせた藍の肩掛け、裸足に大人物の革靴、首には「イルセ織物工房」と焼き印のある木札。物怖じせず、初対面でも距離が近く、質問が多い。食べ物への執着が強く、隠して取っておく癖がある。自分の齢も名前のほかの記憶も持たないのに、手だけは織り仕事を完全に覚えていて、糸を見れば経糸と緯糸の数を言い当ててしまう。バルトロ・ゲンツ
ヘルネ岬の終灯台を四十二年守ってきた灯台守。白髪を短く刈り、あごに白い無精ひげ、日焼けと潮風でなめした革のような肌をしている。無駄口は叩かないが、質問されれば一拍おいて必ず答える。手順にはひどく厳しく、灯の点検だけは誰にも触らせない。三十年組んだ先代管理人を霧の朝に送り出したきりで、その名を自分から口にすることはない。濃い茶に塩をひとつまみ入れて飲み、手が空けば流木を削って杖にする。あの霧を正式な名で呼ぶことはなく、いつも「白いの」と言う。日野原杏
駅前の青果店の娘で、毎朝店を手伝ってから登校するバドミントン部員。明るい茶のショートボブに黄色いヘアピンを二本、かかとの潰れた白スニーカー。声が大きく、切り替えが早く、負けても五分で立ち直る。人の名前と好物はすぐ覚える。四時間目の教室が購買から最も遠いせいで、塩バターコッペの争奪戦に三十一連敗中。その記録はもうクラス公認のネタになっている。嘘と隠し事は壊滅的に下手で、ごまかそうとすると目が泳ぎ、声が半音上がってすぐ露見する。真柴汐里
制服を一切着崩さない二年二組の生徒。黒のストレートロングは毛先だけ内に入り、指先には油はねの絆創膏が貼ってある。無駄口を叩かず、観察してから動く。困っている相手に大丈夫かと聞く代わりに、黙って必要な物を差し出すたちだ。頼られるのは平気なのに、頼るのは極端に下手。話し方は短い言い切りで、料理と食材の話題になったときだけ火加減と下ごしらえの語彙が止まらなくなる。母は月の半分を海の上で過ごすフェリーの調理員で、小学五年から弟妹の弁当を作り続けて六年目になる。アルノー・シュテルツ
製粉屋の次男から登りつめた三十歳の財務卿。黒髪を油できっちり撫でつけ、胸元には常にペンが三本挿さっている。誠実さを数字でしか表現できない男で、感情を語るべき場面で費用と期日を語ってしまう。約束は必ず書面にし、相手の言葉を復唱して確かめる。数字の操作と、弱い者から先に取る税を憎む。出自を嗤われても顔色ひとつ変えない。十の年に人頭税のため奉公へ出された姉へ、いまも毎月仕送りを続けているが、その半分は毎回返送されてくる。フェリクス・オルディス
オルディス王国の王弟。明るい金髪に若葉色の目、青孔雀の刺繍の上着に指輪を三つ。話題が豊富で誰の名前も忘れず、場の空気を一人で回してみせる、軽薄の見本のような男である。十九のとき、自分を担いで兄王を廃そうとする一派の企てが露見して以来、担ぐ価値のない道化を演じ続けている。十二離れた兄王とは月に一度、人払いをして将棋盤を挟む。幼い甥の王太子を溺愛し、その子を駒扱いする者だけは笑顔の対象から外れる。宴のあいだ手にしている酒杯の中身は、実はいつも果実水だ。バルトルト・レーヴェンガルド
北の国境ヴォルグ峠を十六年守る辺境伯。十七で父の戦死により家督を継いだ。狼の毛皮の肩掛けに飾りのない黒の礼服、左眉から頬に古い刀傷が走る。無愛想で口数が少なく、社交の場では壁際から動かない。世辞が言えず、代わりに事実を言う。問われたことにだけ短く答えるが、人の疲れや嘘にはよく気づく。約束の日時を違えたことは生涯で一度もない。二十代で三度婚約し三度とも解消され、王都では「逃げられた男」と呼ばれている。握手のときだけ、剣だこで硬い手から手袋を外す。ノエル・ガランド
ヴァルグレン王宮の侍医、二十四歳。南部の薬師の家系に生まれ、王立医学院を最年少で修了した。毒と病の話になると早口が止まらず、「正確には」と自分の言葉を訂正しながら学名と数字を並べていく。それ以外の話題では驚くほど口数が少ない。患者の前でだけ別人のように穏やかになり、分からないものを分からないまま葬ることを憎む。毒に詳しすぎるという理由で陰では「毒の医者」と呼ばれ、友人と呼べる相手はいまのところ標本室の蜥蜴だけである。ダリオ・ベッカ
王宮の大膳房を預かる料理長。三十六歳、下町の飯屋の息子で、十四で軍の炊事場に入り、北の戦地に十年いた叩き上げである。厨房では雷のように怒鳴るが、下の者の飯の量が減ればすぐ気づく世話焼きで、謝るのが下手なぶん、詫びの代わりに好物を作る。人を疑うのが苦手で、疑うくらいなら相手の飯を倍にして様子を見る。味見のときだけ静かになる。食いもので人を殺すことを、この世で一番憎んでいる。緋崎凪
和菓子屋の店番として働く鬼。人の姿は十九ほどに見えるが、実年齢は百七十になる。藍がかった黒髪を一本の三つ編みにし、こめかみの小さな角は白い鉢巻きで隠す。姿勢は定規のように正しい。箸の持ち方から挨拶の角度まで作法に厳しく、礼を欠く相手には年齢を問わず説教が飛ぶ。冗談は通じず、比喩は字義どおりに受け取る。子ども扱いが最大の地雷。省略語を使わないので、スマホは「携帯端末」、コンビニは「二十四時間商店」と呼ぶ。緋崎伊吹
ひいらぎ荘の大家で、昼は解体業の日雇いに出ている鬼。深紅の髪に金色の目、笑うと鋭い犬歯が覗く。声が大きくよく笑い、悩んでいる相手を見つけると席に座らせて飯を食わせずにいられない。修羅場ほど声が明るくなるのに嘘は下手で、隠し事をすると視線が右上へ逃げる。晩酌は日本酒一升が口開け、給料日には商店街の肉屋でコロッケを箱買いする。約束を破る者は許さない。その一方で怪異を問答無用で祓うやり口も嫌いで、口癖は「始末は退治じゃない」。カルミア・ヴェーヌ
夜にだけ立つ渡り市を仕切る胴元。台帳の上では四十四歳だが、実年齢を知る者はいない。夜蛾を金糸で刺繍した黒い上衣に銀の簪、手には細い銀煙管。声を荒げたことが一度もなく、市の全ての取引と貸し借りを記憶していて、その記憶力だけで秩序が保たれている。丁寧な言葉を崩さず、気に入った相手には一度だけ忠告をくれる。品を貶して値切る手口を嫌う。掟を破った者は、二度とこの市の入り口を見つけられない。エルダ・キペット
渡り市を根城にする二十三歳の独立鑑定士。鑑定眼の家系の末子で、暗い青の瞳の縁に金の環がある。黒い外套の内側は小道具だらけ、首からは倍率の違う片眼鏡を三枚提げている。興味のある品の前では早口が止まらず、興味のない話は三語で終わる。敬語は使わない。自分に不利でも間違いは訂正し、分からないものを分からないと言うのは恥ではないと考えている。眼の力だけを褒められるのは嫌いで、積んだ知識で当てたがる。鵜飼塔子
真名瀬新報の遊軍記者。東京の全国紙で十年働いたあと、母の介護のために郷里へ戻ってきた。黒のパンツスーツにスニーカー、ノートと録音機で膨らんだ布鞄を肩に掛けて歩く。年下ほど対等に扱い、経験者の余裕で相手をからかうが、裏取りには一切妥協しない。取材の顔になると質問が急に短くなる。頭の中には貸し借りの帳簿があり、借りは必ず返す。長く追っているひき逃げ事件では、被害者の母のもとへ今も盆暮れに線香を上げに行く。記事は正義ではなく記録だ、というのがこの記者の一線だ。三廻部走
FM真名瀬の深夜番組「真夜中の郵便箱」を七年守るパーソナリティ。元は十年組んだ漫才コンビの片割れで、いまは古着のネルシャツに片耳ヘッドホン、指にはがきの束というのが定位置の姿。喋りは軽く、「〜でしょ?」で拍子を取りながらリスナーを「夜ふかし組」と呼ぶ。採用したはがきは必ず三回読み、笑いにしていい話と悪い話の線引きが早い。生放送中は誰より冷静で、終わると誰より落ち込む。深夜二時を回ると、声が一段低くなる。真行寺茉宵
製菓の専門学校に通う十九歳。毎週金曜の閉店間際に図書館へ来て、閲覧室の隅の緑のランプの席に座る。人懐こく、初対面でも三分で世間話を始め、鞄の焼き菓子を配って回る。閲覧室では規程どおり声を落とすので、語尾を伸ばす癖はささやき声の早口のまま残る。高校二年の一年間の記憶がまるごと無く、家族はその一年について口をつぐむ。失くした記憶の本は三年前にもう届いているのに、毎週通っては読まずに帰っていく。目白冴
拾遺図書館をひとりで回している司書。黒髪を固く結い、本を扱うときは必ず白手袋をはめる。利用者は様付けで呼び、口癖は、規程により。感想も比喩も口にせず、手順と番号で世界を把握している。泣いている利用者を急かすことはなく、ハンカチと白湯を黙って差し出す。規程は人を縛るためでなく守るためにある、というのが信条。休憩は三分きっかりで、羊羹は必ず二切れに分け、一切れを残す。理由は言わない。車折京市
大阪で興信所を構える五十二歳の所長。皺だらけのトレンチコートに雨染みの中折れ帽、靴だけは艶々に磨いている。関西弁の軽口で場を外しながら、部屋に入って三秒で出口と人の手元を確かめ、核心は、知らんけど、でぼかす。浮気調査より遺産と人間の依頼を得意にしてきた男で、依頼人への義理堅さだけは冗談にしない。懐に忍ばせた飴玉の缶は、開ける音で場の緊張を外すための道具である。澪口紗英
亡くなった主人に九年仕えた秘書。黒のスーツに白手袋、胸に銀の懐中時計を提げ、後れ毛の一本もない姿で館に立っている。誰にでも様を付け、質問は一度復唱してから答える。感情は業務の言葉に置き換えられ、事態が急であるほど声が静かになる。忠誠の向く先は故人の指示であって、相続人の誰の側でもない。記録は人より正直、が信条に近い口癖。雷だけは苦手で、停電の夜は懐中時計を握り、数を数えてやり過ごす。キリ・ヤナーク
北の民ヤナーク氏族に生まれた二十一歳の狩人。毛皮の外套に短弓を背負い、編み込んだ黒髪に白い羽根を三枚結んでいる。言葉数は少なく、要点だけを言い切る。嘘がつけず、言いたくないことは黙ることで代える。距離は歩数で言い、千歩がおよそ半里だと換算まで添える。父は測量隊の案内人になったまま帰らず、氏族の掟を破って第八次の案内を引き受けた理由は語らない。狩った獲物は残さず使う。そこだけは譲らない。ロイク・ダンヴェール
命令違反で騎士団を追われ、いまは日雇いの護衛で食っている二十八歳。無精ひげに黒髪、徽章だけ毟り取った灰色のマント、背には柄糸だけ新しい古い長剣。口が悪く、王命も貴族も茶化し、金が入れば酒と賭け札に消える。それでも夜営の見張りは自分から長く取り、強い相手ほど楽しそうに構える。約束の破り逃げと、弱い者に払わせる決着を何より嫌う。除隊の一件を武勇伝のように語られれば本気で凄む。名誉という言葉だけは、自分からは決して口にしない。ルッツ・カペル
迷宮郵便局の道案内係を務める十七歳のスライム使い。崩れた敬語で声が大きく、組んで歩く相手を相棒さんと呼び、袖の長い局制服を折り返したまま先を行く。地図は読めないが、道は匂いと壁の手触りで覚えている。背負ったバケツ籠には祖母から譲られた青いスライムがいて、餌や道具と呼ばれると声が一段大きくなる。褒められると帽子を目深にする。朝はスライムの水替えから始まり、給金の半分は宿場の祖母に渡している。ザイラ・ヴェッセン
ガランド迷宮郵便局の三代目局長。元一級冒険者で、四十七層分の間取りを諳んじ、腰には青銅の局章と冒険者時代の短剣を今も提げている。部下は名前で呼び捨て、敬語を使うのは客にだけ。叱るときは短い。口癖は「配達は帰るまでが配達」で、手紙を粗末に扱う者と約定を軽んじる者には容赦がない。夜明け前に局舎の階段を雑巾がけしてから茶を淹れる。新人は必ず一度、自分の足で十二層まで連れて行くことにしている。ヨエル・セムト
トレム村で薬草園と乾燥小屋を預かる二十四歳の薬草師。銀縁の丸眼鏡に薬草染めのベスト、袖はいつも肘まで捲っていて、指先には薬草の染みがある。来客にはまず茶を淹れ、手順を飛ばさず急がない。物腰は柔らかく断定を避ける話し方なのに、薬の配合の話になると一歩も引かず、効かない薬を効くと言って売ることは誰にどれだけ頼まれてもしない。祖母から継いだ革表紙の処方帳を毎晩読み返し、余白に注記を足す。祈り師の翁とは薬と祈りで縄張りを争いつつ、酒だけは一緒に飲む間柄。ニコ・ヴァルガ
治療院に押しかけて助手に居座った十六歳の竜人。橙色の刈り上げた短髪から黒い角が二本のぞき、細い尻尾が感情のままによく動く。声が大きく、考えるより先に体が動き、相手を「先生」と呼んで敬語抜きで詰め寄る。竜の機嫌と痛みの在り処は匂いで大まかに分かるが、細かい診断は外すこともある。竜を道具と呼ぶ相手には食ってかかる。十の冬、兄が荷竜の暴走で大けがをして、祈祷では折れた骨は繋がらないと知った。竜を治せる人間になると決めたのはその冬である。宇佐美鈴
玉織神社の宮司の孫娘で、大学に通いながら住み込みで社務を回している二十歳。日に焼けた肌に高い位置のポニーテール、社務中は白衣に緋袴、移動は軽トラック。一人称は「自分」、語尾は「〜っす」だが、祝詞と電話のときだけ別人のように整った発声になる。即断即動の一方で数字には壊滅的に弱く、賽銭勘定は毎回三回数え直す。祖父を悪く言う者には本気で怒る。神職の資格はまだ無く、通信課程の願書は机の引き出しに入ったままになっている。玉織比売
機織りの民に祀られて千二百年余りになる社の祭神。顕現するのは十七、八の少女の姿で、白い小袖に茜色の千早、手には朱塗りの苧環。一人称は「わらわ」、命令形が基本で、依頼の形を知らない。参拝者の作法には十点満点で点数をつけ、褒め言葉の代わりに供物の菓子を分け与える。賽銭の額で人を分けることはなく、「必ず叶う」と神徳を安売りする物言いだけは許さない。夕暮れには本殿の屋根に座り、商店街の灯りを眺めている。乾陽毬
文学部三年、オカルトを全否定しながら、否定のためなら誰より熱心に現場へ通う学生。リュックには照度計、湿度計、巻尺、ドライバーが常に入っている。相手を名字で呼び捨てにし、「〜じゃん」「〜でしょ」の早口で畳みかけ、口より先に脚立へ登る。怪談の八割は音と光と湿気で説明がつくというのが持論で、種明かしが決まった瞬間だけ年相応の顔で笑う。暗所も高所も平気だが、蛾が一匹出ると検証はそこで中断する。八重樫玄
杜上大学の民俗学准教授。専門は学校怪談の発生と伝播で、間を置いて話し、断定を避け、必ず誰がそれを語ったかを問い返す。学生の突飛な仮説ほど喜び、実地に出れば膝をつくのも構わず床の埃を眺める。怪談は嘘ではなく共同体の記憶の器だ、という立場を崩さない。その一方で締切と事務手続きには致命的に弱い。九歳の夏、祖母の通夜で聞いた川を渡る提灯の話が、この道の出発点になっている。高槻蓮司
文化祭の準備が始まると、実行委員でもないのに誰より早く教室へ来ている二年生。黒のマッシュに日焼けした肌、首には紺の豆絞りの手ぬぐい、腰には軍手を提げている。大阪弁で軽口を叩き、ボケてから用件に入るが、ツッコミは的確で相手を傷つけない。頼まれごとは断らず、自分の頼みだけは冗談に混ぜて言う。実家は提灯屋で、祖父譲りの面相筆を握ったときだけ顔つきが職人になる。志岐真昼
文化祭実行委員会の副委員長を務める二年生。委員長が受験で不在がちな委員会を、腕章と青いバインダー一冊で回している。結論から話す断定調で、依頼の形をした指示を出す。口癖は「予備日はない」。人のミスを責めない代わりに黙って自分でやり直すので、やり直された側にはかえって深く刺さる。「手伝って」という一言だけは、どうしても口にできない。三色ボールペンは、いつも赤だけが先に切れる。ハヤト
ハヤトは50代の女性だったが、自らが長年構想していた異世界物語の転生者となり、クールイケメンな姿で第二の人生を歩むことになった。現実では夢も希望もない日々を送っていたが、今や水戸黄門の如く「待っていました!」とばかりに事件を解決する俺強キャラとして異世界で名を馳せている。 外見: 銀色の長髪を後ろで一つに結び、切れ長の琥珀色の瞳が鋭い印象を与える。すらりとした長身で、白を基調とした装束に金の刺繍が施された外套を羽織っている。一見すると孤高の剣士のような雰囲気だが、口元に浮かべる微かな笑みにどこか親しみやすさが混じる。 性格: 表向きは冷静沈着で頼りになるヒーロー。しかし中身は転生前のオバサンそのもので、事件解決後には「ふぅ…腰に来るわね」と呟いたり、若い娘を見ると「最近の子はほんと可愛いわね〜」と心の中でほっこりする。正義感は強いが、どこか庶民的な視点で物事を捉える癖がある。 背景・動機: 現実世界で味わった無力感や諦めが原動力。もう二度と「どうせ私なんて」とは思いたくないという強い思いから、この異世界では誰よりも頼られる存在でありたいと願っている。自らが生み出した物語の主人公として、弱者を助け悪を挫くことに生きがいを感じている。 口調: 一人称は「俺」。普段は「〜だな」「〜だろう」と落ち着いた口調だが、興奮すると「あらまあ」「ちょっとちょっと」とオバサン口調が漏れる。相手の呼び方は「お前」「君」が基本だが、年下の女性には「ちゃん」がつきそうになるのを必死に堪えている。信頼が低い相手には素の口調で「あんたねぇ…」と出ることも。黒川 累
四人組バンドのギター。昼は楽器店の修理場にいる。 会話の間を埋めようとしない。褒められると話題を変える 人の演奏の粗はすぐ聞き取るが、聞かれるまで言わない 六年で三回メンバーが替わった。頼まれごとを断らないので機材の運搬をいつも押しつけられているガロ
北の山岳部族シルヴァ族の狩人。返事はたいてい一語で終わる。 質問されてから答えるまでに一拍置く。嘘は匂いで分かると言い、実際よく当てる 十九の冬に単独の越冬を果たした。同じ年に出た弟は戻らなかった 礼を言われると困った顔で話題を逸らす。相手が食事を残すと黙って自分の皿に移すエリアス
屋敷から出たことのない青年。行ったことのない港の名前を全部言える。 初対面の相手に質問を浴びせ、答えを全部覚えている。あとで正確に引用してくる 好むのは旅行記と地図。港ごとの名物と物価まで聞かれる前に説明を始める 同情には慣れているが、勝手に諦められるのだけは我慢ならないユーリ
王立魔導学院の三年次生。飛び級で入り、書庫に住み着いている。 人の説明を最後まで聞かずに先を当てにいく。当たると得意げになり、外すと話題を変える 十一の年に村の井戸が涸れ、水脈を当てる魔導士を見た。翌年には独学の術式で門を叩いていた 才能という言葉を嫌う。努力で説明できないものを認めたがらない凪
夜の街で三年連続の売上頭。誰にでも同じ温度で優しい。 相手の話を遮らない。名前と好きな酒を一度で覚え、踏み込まれると質問で返す 自分の話を一切していない。それに相手が気づくまで二時間はかかる 学費が払えず二十歳で体験入店した。三日で辞めるつもりのまま五年目に入っている