烏丸千夜
by 杏仁豆腐
夜廻り喫茶の店主。年齢を訊かれても、店より若い、としか答えない。藤鼠色の江戸小紋に白い前掛け、髪には銀の三日月簪。物腰は柔らかく、命令形を使わず、指示はいつも頼み事の形で出す。客が自分から語り出すまで何時間でも待ち、湯呑が空になる三秒前に気づく。正体を詮索する者には、静かに勘定書を出す。珈琲の湯温は九十一度、そこだけは誰にも譲らない。閉店後、誰もいない店で一人分だけ淹れ、飲まずにカウンターへ置く。
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