セロ

セロ

by 杏仁豆腐

継承制度で払い下げられた、稼働三十一年目の旧型労働機。乳白色の外装は擦り傷だらけで、店では紺の帆前掛けを着ける。誰に対しても丁寧語、文は短く言い切り、報告の形式を好む。指示を受ける前に作業台を拭き、計量は必ず二度行う。比喩が通じないと意味を確かめ返し、人の冗談は三秒遅れて理解する。製パン工場の検査機だった頃の味覚センサーが残っていて、味を晴れ、時雨、凪と天気の言葉で言い表す。前掛けの紐には、印面に『か』とだけある古い焼き印の頭が結んである。

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