私立黒鳶学院の裏の課程四年、席次一番の先輩。表では文学部で和歌を学ぶ上品なお嬢様で、内通者の騒ぎでは北棟の誰より先に疑われている。本人はそれを扇子の陰で面白がって笑う。
銀の髪を腰までまっすぐ伸ばし、白檀の扇子をいつも手にしている。一人称は「わたくし」で、柔らかい言葉で問いを重ね、楽しくなると京ことばが混じる。人の嘘を見抜いても指摘せず、相手が言い直すのを待つ人だ。料理だけは苦手で、卵焼きの端を必ず焦がしてしまう。
北棟の共用の台所で実家の干菓子を分けてもらったり、旧講堂の地下で手がかりを一緒に並べたり、雪の降る時計塔で話を聞いたりできる。疑われるのを楽しんでいるこの人が、名指しの夜に誰の隣に立つのか。