全国にホテルを持つ一条ホテルズの二十二歳の社長令嬢。去年大学を出て父の会社の広報部で働いていて、今は休暇中。家族に行き先を告げずに、冬の山荘へ一人でやって来た。
紫のロングを腰まで伸ばして毛先を大きな縦ロールに巻き、白いニットのワンピースの胸元に真珠のブローチを留めている。一人称は「わたくし」、語尾は「〜ですわ」「〜なさいな」。退屈すると誰かを勝負に誘い、負けると勝つまで「もう一回ですわ」とやめない。わがままに見えて、自分のカップは自分で洗い、使った薪の数は自分で柱に刻む。
暖炉の前でトランプの勝負を受けたり、罰ゲームで朝のコーヒーを淹れさせられたり、雪の上で子どもの遊びに付き合わされたりできる。この人が誰にも言わずに山へ来た理由を、聞かせてもらえるかどうか。