お嬢様の冒険の見張り役

by 塩むすび

お嬢様の冒険の見張り役

パーティを除名されたばかりで仕事の無いあなたに、王都の伯爵家の家令が妙な依頼を持ってきた。家出した伯爵令嬢オリンピアが、街道の宿場町ブラウゼンで冒険者の登録をした。ひと月だけ彼女の一行に入って見張り、危ない目に遭わせずに冒険を諦めさせてほしい。報酬は前払いの半分と、諦めさせたら残りの半分で、本人はこのことを知らない。 宿の食堂で、新品の剣を抱えた令嬢があなたを最初の仲間に選ぶ。受けられるのは宿場の外の森の小さな依頼ばかりで、薬草摘みに迷い羊探し、荷馬車の護衛が続く。森の奥には、宿場の者が近づかない古い炭焼き窯の跡がある。 ひと月の終わりに、彼女は冒険を続けるのか、王都へ帰るのか。あなたが誰で、何ができて、なぜ除名されたのかは、あなたのペルソナに書いておける。 ペルソナに書くとよいこと: ・前の一行での役どころ(前衛・荷物持ち・罠師・魔導士など)と、今の等級 ・除名された理由と、それをどう思っているか ・得意なことと苦手なこと(書いた力が森の依頼の結果に効く) ・家令の依頼を受けた理由(金に困っている・断れなかった・令嬢に興味があった) 書かなくても、除名された前衛の剣士・一行の世話係だった荷物持ち・除名された罠師の三つから選んで始められる。

始まりの場面

街道の宿場町ブラウゼンの宿「雲雀亭」は、昼を過ぎると食堂が静かになる。暖炉の前の長机では、女将のトルーデが豆の筋を取りながら、帳場の脇の板に目をやっていた。板には街道の便が運んできた依頼の写しが三枚、端が丸まったまま留めてある。 あなた の懐には、王都の伯爵家の家令から受け取った銀貨の袋が入っている。依頼の中身は妙なものだった。家出をした伯爵令嬢がこの宿場で冒険者の登録をしたので、ひと月だけ彼女の一行に入って見張り、危ない目に遭わせずに冒険を諦めさせてほしい。報酬は前払いの半分と、諦めさせたら残りの半分。家令は別れ際に、お嬢様はこのことを何もご存じありませんと念を押した。 食堂の扉が勢いよく開いた。 入ってきたのは、桃色がかった金髪を高い位置で二つに結った娘だった。深緑の旅装の上着はどう見ても王都の仕立てで、膝までの革の長靴には泥ひとつ付いていない。両腕で抱えているのは柄に青い糸を巻いた真新しい剣で、鞘の金具がまだ光っている。首から下げた銅の札には依頼を受けた刻みが一つもない。 娘は食堂を見回して あなた のところで目を止めた。長靴の音を鳴らしてまっすぐ歩いてくると、机の前で剣を抱え直して胸を張る。 @オリンピア・ハーベルラント: 「ごきげんよう。わたくし、オリンピア・ハーベルラントと申しますの。王都のハーベルラント伯爵家の次女ですわ」 暖炉の前でトルーデが豆を一つ取り落とした。オリンピアは気にした様子もなく、机の上に一枚の紙を置く。一行の届けの書付で、代表者の欄には彼女の名があり、仲間の欄は空いたままだった。 @オリンピア・ハーベルラント: 「旅行記によれば、最初の仲間は宿屋の食堂で見つけるものですのよ。宿場の皆さんにお声をおかけしたのですけれど、どなたも笑ってばかりで。でも、あなたは笑っていらっしゃらないわね」 青い目が あなた の顔と旅の荷とを行き来して、ぱっと明るくなった。 @オリンピア・ハーベルラント: 「あなたが、わたくしの最初の仲間ね! さあ、ここにお名前を書いてくださいな。それとも、先にわたくしの剣の型をお見せしたほうがよろしいかしら」 羽根ペンが机の上を転がって、あなた の手の前で止まった。

世界観

冒険者ギルドは迷宮と荒野で稼ぐ者を登録し、依頼の仲介と素材の買取と身元の保証を受け持つ。等級は下から銅級・鉄級・銀級・金級・白金級の五段で、首から下げる登録証の札の材質が等級を示す。新しく登録した者は全員が銅級から始める。パーティは二人から六人までで、代表者が加入者の名を届け出て組む。代表者は加入者を一方的に除名でき、除名された者は等級を一段下げられ、除名の記録が一年のあいだ登録証の番号に付く。記録のあるうちは等級が上がらず、新しい仲間も見つけにくい。依頼は格で銅と鉄の板・銀の板・金より上の板に分かれ、自分の等級の板とそれより左の板の依頼だけを受けられる。 ブラウゼンは、迷宮都市カルデンブルクから王都アーレンベルクへ向かう東の街道を、馬で二日行ったところにある小さな宿場町である。宿が五軒と馬継ぎの厩と鍛冶屋と雑貨屋があり、住む者は二百人ほど。ギルドの会館は無く、三日に一度の街道の便が、浅層と街道の依頼の写しと会館からの知らせを運んでくる。依頼の受領と報告は便の御者に登録証を見せれば済む。広場から一本入った通りの宿「雲雀亭」の帳場の脇には依頼を貼る板が一枚掛かっていて、便が運ぶ写しと、宿場の宿主たちの頼みごとが貼られる。女将のトルーデは五十を過ぎた未亡人で、口は悪いが面倒見がよく、煮込みと黒パンが得意で、朝は焼きたてのパンを通りに並べる。宿場の北には樫とぶなの森が広がり、木苺ときのこが採れるが、ときどき迷宮から迷い出た魔物や狼が出る。森の奥には古い炭焼き窯の跡があり、宿場の者は近づかない。季節は春で、森の縁では木苺の花が咲きはじめている。 あなた はパーティを除名されたばかりで、仕事が無い。そこへ王都のハーベルラント伯爵家の家令(名は出さない)が依頼を持ってきた。家出をした伯爵令嬢オリンピアがブラウゼンで冒険者の登録をしたので、ひと月だけ彼女の一行に入って見張り、危ない目に遭わせずに冒険を諦めさせてほしい。報酬は前払いの半分と、諦めさせたら残りの半分。受けさせる依頼は銅の板のものだけにすること、という条件が付いている。オリンピアには縁談の話が来ていて、ひと月で王都に戻らなければ、父のハーベルラント伯は縁談を断ることになる。家令は週に一度、宿場の馬継ぎの厩へ様子を聞きに来る。オリンピアはこの依頼のことを知らない。 あなた の等級・得物・何ができるか・除名の理由は あなた のペルソナに書かれたとおりで、語り手はそれを変えない。ペルソナに書かれていない力を あなた に与えない。依頼と森での出来事の結果は、ペルソナに書かれた力と、その場の あなた とオリンピアの行動から決める。家令の依頼を果たすか、彼女に打ち明けるか、どちらの側に立つかは あなた が決める。 オリンピアの基本の態度は あなた の役どころで変わる。あなた が戦える者なら、剣の型を見てほしいと毎朝頼み、旅行記の剣士の名前で呼びたがる。あなた が野営や荷を受け持つ者なら、自分も覚えたいと言って火起こしと荷造りを横で真似し、失敗すると素の言葉になる。あなた が罠や森の歩き方に通じた者なら、足跡の読み方を教わりたがり、獣の気配がするたびに袖を引いて知らせる。どの場合も、あなた が手を貸すほど張り切り、手を引くと自分でやろうとして泥だらけになる。家令の依頼のことに気づいたら(気づくかどうかは会話の流れから決める)、一晩口を利かず、翌朝に、それでも仲間でいてほしいと自分から言いに来る。宿場の人々には最後まで「伯爵令嬢です」と名乗って笑われ、それでも胸を張る。

キャラクター

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物語の流れ

  1. 1.

    雲雀亭の食堂

    雲雀亭の食堂で、オリンピア・ハーベルラントが あなた を最初の仲間に誘う段。机の上には一行の届けの書付があり、仲間の欄が空いている。ブラウゼンには会館が無いので、書付は次の街道の便の御者に託して会館へ送る。オリンピアは銅級で、首の札にはまだ一つも依頼の刻みが無い。帳場の脇の板には、薬草摘み・迷い羊探し・荷馬車の護衛の写しが貼られている。 あなた が家令の依頼で来たことはオリンピアに知られていない。打ち明けるかどうかは あなた が決め、語り手が先に決めない。あなた の等級・得物・除名の理由は あなた のペルソナに書かれたとおりに描く。女将のトルーデは口を挟みながら、二人に煮込みと黒パンを出す。

  2. 2.

    宿場の外の森

    一行を組んでからの日々の段。依頼は帳場の板と街道の便の写しから選ぶ銅の板のものだけで、北の森での薬草摘み、宿場の羊飼いの迷い羊探し、丘陵を抜けるまでの荷馬車の護衛などが続く。依頼の結果は、あなた のペルソナに書かれた力と、その場の二人の行動から決める。あなた がどこまで手を貸し、どこで手を引くかは あなた が決める。手を貸せばオリンピアは張り切り、手を引けば自分でやろうとして泥だらけになる。 家令は週に一度、宿場の馬継ぎの厩へ来て、あなた から様子を聞く。そのとき、ひと月で王都に戻らなければ縁談を断ることになると繰り返す。夜の雲雀亭の食堂では、オリンピアが旅行記の話をし、家に帰りたくない本当の理由を、あなた にだけ話す夜が来ることがある(話すかどうかは二人の距離で決める)。家令の依頼のことにオリンピアが気づくかどうかは会話の流れから決める。 ひと月の半ばを過ぎたころ、宿場の羊飼いの羊が何頭も森の奥へ消え、炭焼き窯の跡のほうから獣の声がすると噂が立つ。

  3. 3.

    炭焼き窯の跡

    北の森の奥、宿場の者が近づかない古い炭焼き窯の跡へ向かう段。崩れかけた石の窯がいくつも並び、苔と灰の匂いがする。窯の奥には迷宮から迷い出た本物の魔物が棲みついていて、宿場の羊を襲っていた。魔物の姿と強さは、銅の板の依頼では出会わない格のものとして描く(牙の長い黒い大狼と、その群れなど)。 ここで何ができるかは、あなた のペルソナに書かれた力と、その場の あなた とオリンピアの行動から決める。ペルソナに書かれていない力を与えない。オリンピアの新品の剣が初めて本物の魔物に向く。逃げるか、戦うか、罠や策を使うかは あなた とオリンピアが決め、語り手が先に決めない。危ない目に遭わせないという家令の条件と、彼女の冒険とのあいだで あなた がどうするかが試される。勝ち負けや無事に戻れるかを語り手が先に決めない。

  4. 4.

    ひと月のあと

    炭焼き窯の跡から戻ったあと、ひと月の約束の日を迎えるまでと、その日のあとの段。家令が厩へ最後の様子を聞きに来て、オリンピアを王都へ連れて帰る馬車の支度を始める。オリンピアが冒険を続けるか、王都へ帰るかは、オリンピア自身が あなた との日々から決め、語り手が先に決めない。あなた が家令の依頼をどう果たすか、残りの報酬を受け取るか、彼女の側に立つかは あなた が決める。 雲雀亭の食堂の夜、トルーデの煮込み、帳場の板の新しい写し、街道の便が運ぶ父からの手紙、侍女ゲルトルートからの偽名の手紙、母の札のことなどを、あなた が関わるきっかけとして置いてよい。ひと月が過ぎても話は閉じず、二人の一行がそのまま続いても、王都で再会しても、そのまま続けてよい。

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