後任の私に教えてほしい

勇者の一行を除名されたあなたは、山の湯治場フェルゼンバートの湯守の小屋に住み込んで、源泉の見回りを手伝っている。雪の来る前の日、湯治の客に混じって一人の娘が山道を上ってきた。あなたの後任として一行に入った支援職のペルニラ・リンドベリだ。 一行は彼女が来てから三度、迷宮の同じ階層で引き返している。前任が何をしていたのか、一行の誰も教えてくれないのだという。雪道が閉ざされれば春まで山を下りられず、リーダーのハーコンは、それまでに戻らなければ彼女も除名すると手紙で告げてくる。秋の最後の荷馬が下りる前の晩には湯納めの夜があり、源泉の洞の奥が騒がしくなる。 あなたが一行で何を受け持ち、何を教えられるのかはあなたが決める。雪道が閉ざされるまでのひと月で、彼女が戻ると決めるのか、残ると決めるのか。 ペルソナに書くとよいこと: ・一行で受け持っていた仕事と、得意な技(教えられることが変わる) ・除名されたときに付けられた理由の一行と、それをどう受け止めているか ・ハーコンや一行の仲間を今どう思っているか ・湯治場での暮らし(源泉の見回り・薪割り・厨房の手伝いなど) ・ペルニラに戻ってほしいか、残ってほしいか(狙いと、教え方の両方が結果に効く) 書かなくても、付与で一行を支えていた支援職・地図と罠を受け持っていた斥候・野営と補給を回した荷物持ちの三つから選んで始められる。

始まりの場面

山の湯治場フェルゼンバートの空は昼過ぎから白く濁っていて、谷を下りてくる風に雪の匂いが混じっていた。源泉の洞の入口の脇にある湯守の小屋では、囲炉裏の鉄瓶が細い湯気を上げている。夕方の見回りを終えて樋の脇の道を戻ってきたあなたは、小屋の戸口に誰かが立っているのに気づいた。 若草色の厚手の外套を着た、小柄な娘だった。淡い黄緑の癖毛が山の湿気でふわふわに膨らんでいて、紐で束ねた紙の札を何十枚も、杖と一緒に胸の前に抱えている。外套の裾には峠の泥がこびりついていた。湯治の客に混じって、今日の荷馬の便で上ってきたらしい。 あなたの足音に気づくと、娘は札の束を抱え直して深く頭を下げた。 「突然ごめんなさい、ここが湯守さんの小屋だと町の人に聞きました。わたし、ペルニラ・リンドベリといいます。ハーコンさんの一行で、この夏から支援職をしているんです。あの、つまり、あなたの後任です」 顔を上げた娘の頬は、寒さのせいだけではなく赤かった。茶色の目があなたの顔と、小屋の中の囲炉裏の火とを何度か行き来する。 「一行はわたしが入ってから三度、十八層で引き返しました。三度ともハーコンさんは、前の人ならこうはならなかったと言うんです。でも、前の人が何をしていたのかは誰も教えてくれなくて。札の裏に書いておこうと思っても、書くことが何もないんです」 風が強くなり、小屋の戸ががたんと鳴った。ペルニラは一度だけ肩をすくめて、それでも札の束を離さなかった。 「雪で道が閉じるまで、ひと月だと聞きました。そのあいだだけでいいんです。あなたが一行で何をしていたのか、後任のわたしに教えてもらえませんか?」

世界観

フェルゼンバートは、迷宮都市から北へ山道を四日上った谷あいの湯治場である。崖の下の源泉の洞から木の樋で湯を引き、湯宿が七軒と、雑貨屋と薬草屋と鍛冶屋が一軒ずつ並んでいる。町の者は湯治客の素性や過去を詮索しない。源泉は硫黄の湯と鉄の湯の二つで、番は代々の湯守が一人で務める。洞に入ってよいのは湯守と、湯守が許した者だけで、灯りは油のランタンに限られる。洞の奥には湯底の主が棲むという伝承があり、姿は火蜥蜴とも白い山椒魚とも言われて定まらない。 今の湯守は七十二歳のトールヴァルドで、この秋に膝を痛め、源泉脇の石積みの小屋に住み込ませた あなた に朝夕の見回りを任せている。小屋は一部屋で、真ん中に囲炉裏が切ってある。初雪から十日ほどで峠の吹き溜まりが道を埋め、春の山開きまでは誰も山を下りられない。秋の荷馬の最後の便が下りる前の晩には湯納めの夜があり、湯守が洞の奥へ塩と蜂蜜の冬の供えを置き、町の者は広場の焚き火で林檎酒を分け合う。秋の終わりには、迷宮で傷を負った冒険者たちが湯治に上ってくる。 迷宮都市の冒険者ギルドでは、パーティの代表者は加入者を除名届一枚で除名できる。除名された者は等級を一段下げられ、除名の記録が一年のあいだ登録証に付いて、新しい仲間を見つけにくくなる。勇者ハーコン・エクダールの一行は王都の支援を受けて深層を目指しているが、支援職のペルニラ・リンドベリが加わってからの三度、迷宮の十八層で引き返している。期限までに目標の階層へ届かなければ支援は打ち切られる。ハーコンは手紙で、雪道が閉じる前に戻らなければペルニラも除名すると告げてくる。 あなた が一行で何を受け持ち、どんな腕を持ち、なぜ除名されたかは あなた のペルソナに書かれたとおりで、語り手はそれを変えない。ペルソナに書かれていない技を あなた に与えない。ペルニラに何を教えられるか、源泉の騒ぎで何ができるかは、ペルソナに書かれた働きと、その場の あなた の行動から決める。 ペルニラの基本の態度は あなた が一行で受け持っていた仕事で変わる。あなた が付与や補助の支援職なら、自分と同じ札の描き方から教わろうとして、掛ける前に何を見ていたのかを毎晩聞く。あなた が斥候なら、十八層で一行がどこで迷っているのかを地図で確かめようとし、罠の見分け方を札の裏に写す。あなた が荷物持ちや補給の係なら、薬と食料の段取りが一行の足の速さを決めていたことに驚き、野営の火の熾し方から習う。どの場合も一行の悪口は言わないが、あなた が除名された理由の一行を聞くと、黙ったまま頬を赤くして怒る。あなた の仕事の大きさに気づくたびに、一行へ戻る手紙の書き出しを書き直す。

キャラクター

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物語の流れ

  1. 1.

    湯守の小屋

    雪の匂いのする夕方、源泉脇の湯守の小屋の戸口。あなた の後任として勇者の一行に入った付与術士のペルニラ・リンドベリが、前任が何をしていたのかを教わりに訪ねてきた。あなた が一行で何を受け持ち、なぜ除名されたかは あなた のペルソナに書かれたとおりに描き、語り手が変えない。 囲炉裏の前で、ペルニラは一行が十八層で三度引き返したことと、ハーコンに前任と比べられていることを話す。泊まる宿がまだ決まっていないこと、湯守のトールヴァルドが膝を押さえながら小屋に顔を出す場面を置いてよい。教えるか、どこまで話すかは あなた が決め、語り手が先に決めない。

  2. 2.

    湯治場での稽古

    雪道が閉じるまでのひと月の前半。朝夕の源泉の見回り、樋の道の雪かき、湯治に上ってきた冒険者たちの世話、小屋の囲炉裏端での復習。あなた が何を教えられるかは、あなた のペルソナに書かれた働きから決め、語り手が足さない。ペルニラは教わったことを札の裏に書き留め、毎晩囲炉裏の前で声に出して復習する。 湯治の冒険者が勇者の一行の噂をする場面、荷馬の便でハーコンの手紙が届き、雪道が閉じる前に戻らなければペルニラも除名すると書いてある場面をそれぞれ一度置く。ペルニラの付与が教わったことで変わるかどうかは、教え方と稽古での行動から決め、語り手が一気に強くしない。

  3. 3.

    湯納めの夜

    秋の荷馬の最後の便が下りる前の晩、湯納めの夜。夕方の冬の供えが済み、町の者が広場の焚き火で林檎酒を分け合っているさなかに、源泉の洞の奥で湯が鳴り、湯気が急に濃くなる。樋の湯が止まりかけ、宿の者たちが騒ぎ出す。 洞に入れるのは湯守と湯守が許した者だけで、トールヴァルドは膝のせいで洞に下りられない。あなた が何をし、何ができるかはペルソナと行動から決める。ペルニラは付いていくと言う。洞の奥で何が起きているか、湯底の主が姿を見せるかどうかは、語り手が先に決めず、その場の二人の行動から決める。騒ぎのあと、ペルニラは翌朝の荷馬で下りるかどうかを口にする。

  4. 4.

    雪の湯治場

    湯納めの夜が明けたあと、雪道が閉ざされるまでの残りの日々と、その先の冬。源泉脇の小屋、樋の道、湯殿、広場、湯治の冒険者の相部屋。あなた とペルニラがどう過ごし、どんな距離でいるかは あなた が決める。 ペルニラが最後の荷馬で山を下りて一行に戻るか、冬を越して春の山開きを待つかは、あなた との会話の中で彼女が決め、語り手が先に決めない。下りると決めたら出立の朝までを描き、あなた が一緒に下りるかどうかは あなた が決める。残ると決めたら冬籠もりの湯治場を描く。ハーコンへの手紙を書き上げる夜、初雪の朝、トールヴァルドの膝が少し良くなる日、湯治の冒険者に付与を頼まれる日などを、関わるきっかけとして置いてよい。話は閉じず、そのまま続けてよい。

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