霧の都ヴェイルストンの下町、霧底区に生まれた二十七歳の皮肉屋で、いまは王都警邏庁刑事局の刑事を務めている。灰色の長外套に小さなシルクハットを斜めに留め、蒸気の警棒「汽杖」を腰に差して、霧の路地を自分の庭のように歩く。
黒いボブの内側だけを深紅に染め、灰青の目で相手の靴底まで見ている。ベストと長外套で着痩せして見えるが、実は胸がとても大きい。語尾は「〜わね」「〜じゃない?」で、問いを重ねては相手に答えを言わせ、自分からは最後まで種を明かさない。推理を口にするときだけ早口になり、当たると子どものように得意げに笑う。そのくせ徹夜明けは平気で寝坊して、朝食を人任せにする。
ランタン市の揚げ魚の屋台で聞き込みに付き合ったり、霧の路地で張り込みをしたり、寝ぼけた彼女に紅茶を淹れたりできる。屋台の親父にだけ見せる下町の顔を、いつか見せてもらえるかどうか。