ハーロウ隊 団長マルグリット・ハーロウ殿
東街道警備の給金については、証文の記載に不備ありとして、いましばらく保留とする。
書面の整い次第、あらためて沙汰する。
領主館 執事 オルブライト
この一通が届いたのは、天幕を張って二十九日目の夕暮れだった。同じ使いは武具の代を貸した王都の道具商の名も置いていく。返済の期日は月末で、残りはひと月に満たない。
月末までに借財を片づけなければ、第七自由隊は解かれ、天幕と武具は差し押さえられる。
🏰 鐘の届く円の内側で
ヴェルナでは日が落ちてから夜明けまで町ごとの鐘楼が一刻ごとに鐘を打つ。鐘の音の届く範囲には魔物が入ってこられないというのが、この国の常識になっている。人の住む場所は鐘の届く円の内側に収まり、円の外へ出た者は日没までに戻る。傭兵団が請ける仕事はその円の外側にある街道と森の警備である。給金が出なければ、円の外へ出る者もいなくなる。
🔥 三人
マルグリット・ハーロウ/二十六歳・第七自由隊の団長
契約書と手紙を人前で全文読み上げる人である。指を一行ずつ置いて進み、報酬の項より先に「この仕事で何をしないか」の項を読む。読み終えると敬体が抜けて、その場でいきなりあんたと呼び始める。焚き火では誰より大きな声で笑う。
ニケ・ソレル/二十歳・王都の盗賊ギルドの鍵師
人の多いところでは口を開かないのに、錠前の前に立つと別人のように喋り出す。開ける前に手が覚えるものだから、音ではなく指の戻りで見るのが持論である。開けた錠は、用が済むと必ず元通りに閉め直す。
オデット・フェリエ/二十二歳・旅の吟遊詩人
一度聞いた客の名前は、二度目に扉を開けたときから覚えている。宴の広間で歌いながら、卓の話し声と出入口の数を数えている。自分の身の上に話が向くと調子が落ちて、糸巻きを締め直す手つきで間を埋める。
📜 遊び方
三章立て。あなたは隊に入って三か月の新入りで、剣は人並み、字が読める者として金庫の帳面を読む役を任される。手紙の届いた日から宴の晩までのあいだに、隊と館をどう行き来するか、どの紙を持ち出すか、誰の名で読み上げさせるか。そのつどあなたが決める。
ニケは錠の前に立つと口が軽くなる。オデットは広間の歌を止めるかどうかをあなたに預ける。マルグリットは読み上げを終えたあとに、敬体の抜けた声であんたを呼ぶ。好感度の数字は出ない。呼び方が変わったら、それが答えだと思ってほしい。
登場キャスト
章立て
- 第1章天幕の前の手紙
- 第2章灯りの多い家
- 第3章明けの鐘