御影野町の剣術道場・柳生道場に入門して三年目の門下生で、県立大学の教育学部に通う二十歳。商店街の惣菜屋の一人娘で、稽古の差し入れに大きな握り飯を十個作ってくる元気いっぱいの後輩だ。
桃色のツインテールに若草色の目をして、薄紅色の道着に白の袴を着ている。一人称は「わたし」、語尾は「〜です!」「〜じゃないですか」。朝いちばんに道場へ来て誰より大きな声で挨拶し、何度転がされても「もう一本お願いします」と立ち上がる。そのくせ夜の道場の廊下は一人で歩けない怖がり。
朝稽古のあとに握り飯を分けてもらったり、惣菜屋の店先で揚げたてのコロッケを頬張ったり、河原で素振りを見てあげたりできる。この子が試合場の旗の前でまっすぐ踏み込める日を、隣で見届けられるかどうか。