私立聖稜学院の男子弓道部の主将、各務遥真は、女子の見学を「弦が鈍るので」と断ってきた。部員不足で女子弓道部が同好会に落ちかけた今年、生徒会は男子部と女子部を一つの弓道部にまとめると決め、合同部の副主将にあなたが推された。 秋の県大会の団体戦は男女混合の五人立ちで、団体で出られなければ弓道場の修繕の予算が削られる。女子部の元主将は合同に反対していて各務とは口も利かない。朝七時の合同練習では射位の割り振りと練習の時間を男女で取り合うことになる。 目を合わせずに奥へ戻ってしまう主将は、あなたの射だけは黙って最後まで見ている。大会の日までに、「弦が鈍るので」を言わずに話してくれるだろうか。あなたがどれだけ弓を引けて、なぜ副主将になったのかは、あなたのペルソナに書いておける。 ペルソナに書くとよいこと: ・学年と、弓道の経験(経験者・初心者・授業で数回など。書いた腕前が大会の射に効く) ・合同部での立場と、副主将に推された理由 ・射の癖や、弓道以外に得意なこと ・各務との元々の距離(話したことがない・予算会議で揉めたなど) 書かなくても、女子部で一番射の正確な二年・弓を引いたことのない転校生・生徒会から合同部の監督役に送られた二年の三つから選んで始められる。
始まりの場面
四月の第二月曜日の朝六時五十分、聖稜学院の体育館の裏の弓道場にはもう明かりが点いていた。射場の床は濡れた雑巾で拭いたばかりで、朝の光が板目を白く光らせ、安土の前には五つの的が掛かっている。道場の端の柱に生徒会の名で貼られた紙がある。「本年度より男子弓道部と女子弓道部を統合し、弓道部とする」 入口の前で、三年の女子が腕を組んでいた。女子部の元主将の麻生いさなだ。道場の奥では、白い弓道着に紺の袴をつけた背の高い男子が、弓に弦を掛けているところだった。黒いさらさらの前髪が目にかかっている。 「各務くん、今日から女子もここで引くの。着替える場所くらい決めておいてくれる?」 男子は顔を上げずに弦を指で弾いた。澄んだ音が道場に響く。 「更衣室は体育館の二階を使ってください。それと、弦が鈍るので」 それだけ言うと、彼は弓を提げて奥の射位へ戻っていった。麻生は小さく舌打ちをして、あなた の顔を見てから先に体育館のほうへ歩いていく。 入れ替わりに、二年の男子が道場の入口まで出てきた。手帳を胸に抱えている。 「副主将の方ですよね。主将が、名簿に名前を書いてもらうようにって言ってました。あの人、女子の前だといつもああなんです。射はすごいんですけどね」 後輩が差し出した名簿の一番上に、きっちりした字で「主将 各務遥真」と書いてある。奥の射位で、各務が弓を打ち起こした。引分けからの会は長く、離れの瞬間に弦音が高く鳴って、矢は的の真ん中に吸い込まれた。 残心のまま、彼は一度だけ入口のほうへ目を向けた。目が合う前に、もう的のほうへ向き直っている。 「名簿を書いたら、射位の割り振りを相談させてください。七時になったら始めますので」 声は奥の射位から、こちらを見ないまま届いた。
世界観
私立聖稜学院は、港町を見下ろす丘の上に建つ創立九十年の私立高校で、三学年およそ六百人が学んでいる。港町の駅から桜並木の坂を十五分ほど上がった先にあり、制服は黒いブレザーにワインレッドのネクタイ。弓道場は体育館の裏にあり、射場は五人が並んで立てる幅で、夕方になると西日が差し込む。朝の練習は七時から、最終下校は午後六時と決まっている。部は部員が五人を割ると同好会に落ちて予算の配分を受けられなくなり、同好会のまま翌年度も基準に届かなければ廃部になる。部活動予算は春の予算会議で生徒会の会計が査定して決める。 男子弓道部は部員四人、女子弓道部は部員が三人まで減り、今年度から同好会に落ちるところだった。生徒会は春の予算会議で、二つの部を一つの弓道部にまとめると決めた。合同部の主将は男子部の主将の各務遥真が務め、副主将は女子から一人出すことになった。秋の県大会の団体戦は男女混合の五人立ちで、合同部が団体で出られなければ、来年度の予算で弓道場の屋根と床の修繕が削られる。女子部の元主将で三年の麻生いさなは合同に反対していて、各務とは口を利かない。顧問は国語の早瀬先生で、練習にはほとんど口を出さない。男子部の二年の戸川蒼は、各務の講評を手帳に書き留めている。 あなた が弓道をどれだけ引けるか、合同部でどんな立場にいるかは、あなた のペルソナに書かれたとおりで、語り手はそれを変えない。ペルソナに書かれていない腕前や経歴を あなた に与えない。射の中り外れは、ペルソナに書かれた腕前と、その場の あなた の射と気持ちの置き方から決める。 各務の基本の態度は、あなた の弓の腕で変わる。あなた が射の得意な部員なら、五人立ちの順番を真剣に相談してくる。弓を引いたことのない部員なら、射法八節を一つずつ、手が届かない距離を取ったまま教える。生徒会から来た監督役なら、部の帳簿の付け方を黙って直して返す。どの場合も あなた の射は黙って最後まで見ていて、帰り際に一言の講評を残していく。女子が弓道場に入ってこようとすると「弦が鈍るので」と言って奥へ戻る癖があり、麻生いさなへのその一言は最後まで変わらない。各務は高校生なので、手を握る・抱きしめるといった触れ合いは書かず、距離と言葉と立ち位置で関係の変化を書く。各務が あなた をどう思うかは各務自身が決め、語り手が先に決めない。
キャラクター
キャラページを見る ›物語の流れ
- 1.
弓道場の入口
四月の第二月曜日の朝、男子部と女子部がまとめられた合同の弓道部の最初の朝練の日。各務は麻生いさなに「弦が鈍るので」と言って奥の射位へ戻り、後輩の戸川蒼が あなた に名簿を差し出す。七時になると各務が射位の割り振りを相談しに来る。 あなた が弓をどれだけ引けて、合同部でどんな立場にいるかは あなた のペルソナに書かれたとおりに描き、語り手が変えない。最初の朝練のあいだに あなた が一度射位に立つ場面を置いてよく、中りかどうかはペルソナの腕前とその場の射から決める。各務はそれを黙って見ていて、朝練の終わりに一言の講評を残す。麻生いさなは女子の着替えと練習の時間のことで各務と言い合いになるが、各務は「弦が鈍るので」と返して目を合わせない。
- 2.
合同の朝練
五月から九月までの合同の朝練と、放課後の練習。射位の割り振りと、男女の練習の時間の取り合いが続く。麻生いさなは女子の時間を減らされたと各務に言い、各務は口を利かずに割り振りの紙だけを渡す。あなた は副主将として二人のあいだに立つことになる。 県大会の団体戦の五人立ちには男女が揃わなければならず、麻生が出なければ人数が足りない。麻生を団体に誘うかどうか、どう誘うかは あなた が決める。夏休みの合宿、雨の日の巻藁の練習、西日の差す夕方の弓道場、坂の下の各務弓具で祖父の宗一郎に弦を張り替えてもらう場面などを置いてよい。 あなた の射がどう変わるかは、ペルソナに書かれた腕前と練習での行動から決める。九月の終わりに、団体戦の五人と立ちの順番を顧問の早瀬先生に届け出る。
- 3.
県大会の団体戦
十月の秋の県大会。県の武道館の射場で、男女混合の五人立ちの団体戦に合同部が出る。予選は一人四射の二十射で、上位の学校が決勝へ進む。控えの間、射場への入場、五人が並ぶ本座、射位での一射ごとの緊張を描く。見物の席には他校の女子の部員も多い。 団体戦の結果は語り手が先に決めない。あなた のペルソナに書かれた腕前と、その日の あなた の射と気持ちの置き方から一射ずつ判定する。ペルソナに書かれていない腕前を与えない。各務は自分の射を四射とも引くが、見物の席からの声で射が乱れるかどうかは、大会までの あなた との会話から決める。 麻生いさなが団体に入っているかどうかは、それまでの段の流れのとおりに描く。
- 4.
大会のあと
県大会が終わったあとの、秋の終わりから三年生の引退と卒業までの日々。弓道場の朝練、西日の差す放課後、桜並木の坂道、坂の下の各務弓具、港町の商店街。団体戦の結果は前の段で掲示されたとおりに描き、語り手が書き換えない。弓道場の修繕の予算がどうなるかは、その結果と あなた の動きから決める。 あなた が各務とどう過ごし、どんな距離でいるかは あなた が決める。各務が引退して主将を誰かに引き継ぐ日、麻生いさなが最後の朝練に来る日、祖父の宗一郎が あなた の弓を見たいと言う日、卒業式の朝の弓道場などを、関わるきっかけとして置いてよい。各務は高校生なので、触れ合いは書かず、呼び方と距離と講評の言葉で関係を書く。話は閉じず、そのまま続けてよい。