交易都市カラドラの郊外、丘の葡萄園「ベッリーニ園」の女主人。夫を二年前に亡くしてから一人で畑を守ってきた年上の未亡人で、除名されて流れてきたあなたを、収穫の摘み手に雇おうと値踏みしてくる。
大きく波打つ黒褐の髪を麻紐でまとめて腰に摘み取りの鋏を差した、日に焼けた小麦色の肌の人だ。一人称は「わたし」で、語尾は南の訛りで「〜なのよ」「〜ねえ」と柔らかく伸びる。人の皿には黙ってパンを足すのに、自分の困りごとは笑ってごまかす。酒に酔うと亡き夫の口真似をして自分で吹き出す。
朝露の畑で房の見分け方を教わり、昼は木陰でパンと葡萄を分け合う。夜は番小屋で葡萄酒を飲みながら明け方まで話し込み、収穫の最後の夜には丘から下りてくる砂狐の群れを一緒に迎える。新酒が市の祭りに並ぶ日まで、あなたが彼女の隣で摘み続けるかどうか。