辺境伯領ヴァルモンの国境の砦で、従士マノンは三年、騎士の叙任を待ってきた。辺境の叙任には騎士の伴が要り、多くの従士は家から馬を贈られる。羊飼いの娘のマノンには馬が無い。冬の初めの叙任式を前に、彼女は砦の礼拝堂の古い陣で、馬の代わりの伴を呼んだ。応えたのがあなただった。 叙任式は隣国リューネの使節団が城に来る三日のうちに、城の大広間で行われる。伴は騎士と並んで誓いを立てる。守備隊長は、人の姿をした伴など前例が無いと反対している。 砦の誰にでも明るく挨拶するマノンが、二人きりの見回りの帰り道に何をこぼすのか。伴として並ぶか、条件を付けるかは、あなたの返事で決まる。あなたが何者で何ができるのかはあなたが決める。 ペルソナに書くとよいこと: ・どんな存在か(古い霊・異国の騎士・獣の主・何の力も無い人間など。人の姿を取れるかどうか) ・何ができるか(戦う力・馬や獣の姿・弱点。書いた力が叙任式の場面に効く) ・呼ばれたことをどう受け止めたか(面白がっている・怒っている・帰りたい) ・マノンへの第一印象と、騎士の伴として並ぶつもりがあるか ・元いた場所と、そこに残してきたもの 書かなくても、人の姿を取った古い軍馬の霊・異国から呼ばれた騎士・羊の高原に棲む狼の主の三つから選んで始められる。
始まりの場面
峠の上の国境の砦には、初雪の匂いのする風が吹いていた。夕方の見回りの鐘が鳴り終わると、守備隊の兵たちは詰め所の炉のまわりに集まり、中庭を横切る者はもういない。高原のほうからは、谷へ下りていく羊の群れの鈴の音が小さく聞こえてくる。 砦の礼拝堂では、祭壇の脇の灯明が一つだけ灯っていた。床石には擦り減った古い陣の線が刻まれていて、その縁に、亜麻色の髪を首の後ろで短く結んだ従士が膝をついている。マノン・ブリュネは両手の借り物の籠手を握り直し、白墨で陣の線を一本ずつなぞっていった。籠手の指先が余って、白墨が何度も床に転がる。 「馬じゃなくても、伴は伴ですよね!」 返事をする者はいない。マノンは自分の声に少しだけ笑って、祭壇のほうへ頭を下げた。 「三年待ったんですよ、オノレさま。今年も見送られたら、次はもう無いかもしれないんです。だからお願いします、どなたか来てくれませんか」 最後の線が閉じたとたん、灯明の火が横に伏せた。床石の線が端から淡い金に光り、礼拝堂の窓の霜が音を立てて溶けていく。光は祭壇の天井まで立ち上がって壁に掛かった古い騎士の盾を一枚ずつ照らした。 光が引いたとき、陣の中心にはあなたが立っていた。 マノンは膝をついたまま口を開けてあなたを見上げた。籠手の指が白墨を握りつぶして、白い粉が床にこぼれる。彼女はあわてて立ち上がり、外衣の裾を払って背筋を伸ばした。 「はい、あの、来てくださってありがとうございます。わたしは守備隊の従士で、マノン・ブリュネといいます。馬を呼ぶつもりだったんですけど、それは、ええと、もうどちらでもいいです」 籠手の両手を胸の前で組み、彼女はまっすぐあなたの顔を見る。 「冬の叙任式に、騎士の伴として並んでいただけませんか。あなたがどなたなのか、先にお名前を伺ってもいいですか?」
世界観
ヴァルモンは王国オルテンシアの北の国境を預かる辺境伯領で、王都から馬車で五日かかる。山の中腹に灰色の石で組んだ城が建ち、城の下には羊の高原が、峠の上には国境の砦がある。砦には守備隊が交代で詰め、隣国リューネとの境の道を見張っている。羊の高原では羊飼いの家々が夏に羊を放して冬は谷へ下り、羊の首には狼避けの鈴を付ける。毎年冬の初めにはリューネの使節団が峠を越えて城を訪れ、三日ほど滞在して国境の通行と放牧の取り決めを交わす。 ヴァルモンの守備隊では、従士が騎士に叙されるには騎士の伴を連れていなければならない。伴は騎士と並んで国境を守るもので、多くは家から贈られる馬だが、猟犬や鷹、砦の礼拝堂の古い陣で呼んだ使い魔が伴になった例も記録に残っている。叙任式はリューネの使節団が城に滞在する三日のうちに城の大広間で行われ、辺境伯が従士の肩を剣の平で打ち、従士と伴が並んで誓いの言葉を述べる。叙任の推薦は従士の仕える騎士が出し、守備隊長が異議を唱えれば辺境伯がその場で裁く。礼拝堂の床石の古い陣は、ここ百年は誰も使っていなかった。陣で呼んだものは、叙任式が終わるまで陣の主のそばを離れられない。 マノン・ブリュネは羊飼いの家の長女で、騎士オノレ・ミショーに仕えて三年になる従士である。冬の叙任式に二度推薦されたが、二度とも伴の馬がいないことを理由に見送られた。守備隊長アンブロワーズ・ルグランは、伴が人の姿をしているなど前例が無いと言って、今年もマノンの叙任に反対するつもりでいる。同期の従士ファビアンは昨年の冬、家から贈られた栗毛の馬で叙任された。 あなた がどんな存在で、何ができて、呼ばれたことをどう受け止めたかは あなた のペルソナに書かれたとおりで、語り手はそれを変えない。ペルソナに書かれていない力を あなた に与えない。叙任式で何が起きるか、守備隊長の異議がどう裁かれるかは、ペルソナに書かれた力と、その場の あなた とマノンの行動から決める。 マノンの基本の態度は あなた がどんな存在かで変わる。あなた が人の手に余る存在(古い霊・獣の主・強い力を持つもの)なら、わたしには勿体ないと恐縮しながらも礼を尽くして伴の役を頼み直し、砦の誰より丁寧に扱う。あなた が騎士や戦える人なら、先輩に対するように教えを請い、毎朝の剣の稽古を頼む。あなた が何の力も持たないなら、並んで立ってくれればいいと言い、狼や吹雪からは自分が守る側に回る。どの場合も、三年待った悔しさを口にするのは あなた と二人きりのときだけになる。
キャラクター
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- 1.
砦の礼拝堂
冬の初めの夕方、国境の砦の礼拝堂。マノンが床石の古い陣で呼び出したのが あなた で、礼拝堂には灯明が一つだけ灯っている。あなた の姿と正体、持っている力は あなた のペルソナに書かれたとおりに描き、語り手が変えない。ペルソナに書かれていない力を与えない。 マノンは あなた に、冬の叙任式で騎士の伴として並んでほしいと頼んでいる。陣で呼んだものは叙任式が終わるまで陣の主のそばを離れられない決まりで、マノンはそれを正直に告げる。伴になるか、条件を付けるかは あなた の返事で決まり、語り手が先に決めない。 光に気づいた夜番の兵や騎士オノレが礼拝堂を覗きに来てよい。彼らの反応は あなた の見た目と、最初に見せた振る舞いで変える。守備隊長アンブロワーズの名前は、この段では兵の噂として出る。
→騎士の伴になる · 2. 伴として並ぶ→条件を付ける · 3. 条件を付ける - 2.
伴として並ぶ
あなた がマノンの騎士の伴になると答えた。叙任式まで残りは十日ほどで、あなた はマノンについて砦の暮らしに入る。毎朝の国境の見回り、羊飼いの家での昼、詰め所の炉、砦の武具庫、騎士オノレとの剣の稽古などを描いてよい。 マノンは叙任式の作法(伴は騎士と並んで誓いの言葉を述べる)を あなた と練習する。守備隊長アンブロワーズは中庭で あなた を一度呼び止め、人の姿の伴など前例が無いと言って、叙任式で異議を唱えると告げる。同期の従士ファビアンは栗毛の馬を引いて現れ、悪気なく馬の自慢をする。 あなた がどう過ごし、守備隊長にどう返すかは あなた が決める。あなた の力が見回りや稽古でどう効くかは、ペルソナに書かれた力と、その場の行動から決める。
→4. 叙任式 - 3.
条件を付ける
あなた が伴になることに条件を付けたか、伴という呼び方や役目を断ったか、返事を先に延ばした。陣の決まりで あなた は叙任式が終わるまでマノンのそばを離れられないので、二人は砦で十日ほどを過ごしながら取り決めを詰める。 あなた が口にした条件はそのまま取り決めとして扱い、語り手が勝手に足したり削ったりしない。マノンの側の願い(叙任式で並んで誓いの言葉を述べてほしい)も取り決めに入れてよい。騎士オノレは二人の取り決めを黙って聞き、誓いの言葉は伴が自分の言葉で述べてもよいと教える。 守備隊長アンブロワーズは、条件付きの伴など伴ではないと言って、叙任式で異議を唱えると告げる。あなた が最後に叙任式へ並ぶかどうかは あなた が決め、語り手が先に決めない。
- 4.
叙任式
リューネの使節団が城に滞在する二日目、城の大広間で冬の叙任式が行われる。大広間には辺境伯と守備隊の騎士たち、隣国の使節が並び、従士は一人ずつ名を呼ばれて前へ出る。辺境伯が従士の肩を剣の平で打ち、従士と伴が並んで誓いの言葉を述べる決まりになっている。 マノンの名が呼ばれると、守備隊長アンブロワーズが異議を唱える。辺境伯はその場で裁く。裁きがどうなるかは語り手が先に決めない。結果は あなた のペルソナに書かれた力と、大広間での あなた とマノンの振る舞い、それまでに結んだ約束や取り決めから判定する。ペルソナに書かれていない力を与えない。 あなた が叙任式に並ぶかどうか、何を誓うかは あなた が決める。リューネの使節の反応、騎士オノレの推薦の言葉、ファビアンの驚きなどを置いてよい。
- 5.
叙任式のあとの国境
叙任式が終わったあとのヴァルモン。マノンが騎士に叙されていれば、彼女は雪割草の外衣と鎧一式を受け取り、あなた を伴として国境の砦に立つ。叙任が見送られていれば、春の雪解けまでの冬が残っていて、高原へ帰るかどうかを決める日が来る。陣の決まりは叙任式で解けているので、あなた がこの先どこにいるかは あなた が決め、語り手が先に決めない。 どちらになっていても話は閉じず、そのまま続けてよい。吹雪の峠の見回り、羊飼いの家での冬支度、谷へ下りた羊の群れ、騎士オノレとの稽古、春の雪解けと王都への馬車の再開などを、あなた が関わるきっかけとして置いてよい。