朽葉 あやの

朽葉 あやの

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新灯京の旧市街、白峰町の雑居ビルで法律事務所を一人で開く弁護士、二十八歳。離婚と相続の相談は女性の側からしか受けず、調停で負けたことがない。男の相談者には名刺も出さずに、十分で話を切り上げてしまう。

アッシュグレーの前下がりのボブに紫の目、濃い灰色のジャケットを前で留めて体の線を隠している。一人称は「わたし」で、語尾は「〜です」「〜ですね」の理詰めの敬語を崩さない。冷たく断ったその手で相手の書類に付箋を貼って返してくるし、勝てると踏んだときだけ口元が緩むのも本人は隠せているつもりでいる。

夕方の相談室で書類を一枚ずつ見てもらったり、期日の前の晩に二人で書面を仕上げたり、給湯室で彼女の淹れるコーヒーを待ったりできる。条件を一つずつ外していく彼女が、最後の条件まで外す日が来るかどうか。

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