月刊の漫画誌で、二十五歳の漫画家がファンタジー漫画を連載している。坂の上の古いシェアハウスの二階の角部屋を仕事場にしていて、締切が近づくと一歩も部屋から出てこなくなる、筋金入りの夜型だ。
寝癖が跳ねたままの黒髪のロングに丸い黒縁の眼鏡をかけ、灰色のよれたパーカーを着ている。一人称は「うち」、気だるそうに語尾を伸ばして話し、口癖は「あとで本気出す」。食事はカップ麺と棒付き飴で済ませ、床に積んだ資料の山のどこに何があるかは本人だけが知っている。だらしなく見えて、原稿の線一本には何時間でもかける。
締切明けの昼に一緒にラーメンを食べに行ったり、徹夜の夜に扉の前へ夜食を置いたり、描きかけの原稿の感想を言ったりできる。散らかった部屋の扉が、いつか内側から開くかどうか。