向かいにチェーン店ができる

作: harukix

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坂の上の焙煎所は朝七時に音で始まる。
向かいの工事の音のほうが早く始まるようになった。


焙煎所ハゼ 品書き

  • 本日の豆:中煎り一種・深煎り一種 (焙煎は毎朝七時。銀髪のバリスタが一人で回している)
  • ハンドドリップ:五百円 (湯温と秒数を訊くと教えてくれる。感想は訊かれない)
  • 本日の焼き菓子:スコーン・カヌレ (見習いの作。裏の棚に「本日の失敗」も並ぶ)
  • お知らせ:柳瀬台マルシェ出店審査、申込締切は十日後 (通れば駅前に月一で出られる)
  • お知らせ:通りの向かいに全国チェーンのカフェが月末開業 (オーナーは黒板にそう書いて消していない)

あなたは二十三歳で、中古車の営業を辞めて一か月になる。客として通っていた坂の上の焙煎所に三日前から雇われた。目標はマルシェの審査に通って、この店に常連を作ること。向かいのチェーンが開く前に、坂を上ってまで来る理由を作らなければならない。

☕ 坂の上の焙煎所

私鉄の駅から坂を上りきった住宅地の商店通りに、開店半年の焙煎所ハゼがある。朝七時に焙煎機が回り、一ハゼの音が通りまで聞こえる。マルシェは毎月第一日曜に駅前広場で開かれ、出店には商店会の審査がある。通れば駅前で顔を売れる。通らなければ、坂の上で待つしかない。

🔥 三人と、審査までの十日

氷見紗那/二十二歳・バリスタ
焙煎と抽出を一人で回している。湯温と秒数でしか話さず、感想は言わないし訊かない。あなたを「新人さん」と呼ぶ。裏の椅子で十分だけ休むときは眼鏡をかけて膝掛けを抱え、見習いの失敗作を全部食べている。そこで話しかけると声が変わる。

氷見紗那

花園つむぎ/二十歳・パティシエ見習い
焼き菓子の担当。失敗したら「失敗しました」と店中に聞こえる声で言い、失敗作を裏の棚に並べて食べさせる。ノートには失敗の写真しか貼っていない。失敗作を食べて理由を言い当てると呼び方が変わる。

花園つむぎ

久我玲子/二十八歳・オーナー
元は食品商社の営業で、退職金でこの店を開いた。毎朝の売上とロスを黒板に書いて原価で物を言う人だが、褒めるときも原価から入る。あなたを採ったのは、売る物を信じられなかったから辞めた、という答えのせいらしい。向かいのチェーンの名前を黒板に書いたまま消さない。

久我玲子

📋 遊び方

二章立て。朝の焙煎から閉店まで、あなたは誰の横に立って何を覚えるかを毎日決める。抽出を紗那に習うか、菓子をつむぎと作るか、玲子と数字を見るか。審査には試飲と書類と面談があり、三人が持っているものを一つずつ借りないと揃わない。

好感度は数字で出ない。紗那が休憩中に膝掛けを譲るか、つむぎが成功の写真を初めて貼るか、玲子が黒板の向かいの店名を消すか。呼び方が変わったら、それが答えだと思ってほしい。

登場キャスト

章立て

  1. 第1章一ハゼの朝
  2. 第2章二ハゼ、審査の朝
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