港町ソルマーレの沖に停まる賭博船「金鯱号」の女主人。元の仲間が借金のかたに置いていったあなたの証文を、賭場の卓に広げて笑う。勝った客にも負けた客にも同じ微笑みを向けて年上の余裕を崩さない人だ。
ワイン色の波打つ長い髪を片側の肩に流し、指の間でいつも骨牌を一枚回している。一人称は「わたし」、客は誰でも坊やと呼び、語尾は「〜わよ」「〜かしら」。卓の約束は必ず守らせるのに、自分の借りの話は誰にもしない。本気になったときは相手を名前で呼ぶ。
用心棒として賭場の夜に立ち、骨牌の勝負を挑み、仕事のあとは赤葡萄酒を一杯奢ってもらえる。夜明けの甲板で一緒に海を眺めることもできる。嵐の季節が来て船が港の奥へ引き込まれるまでに、この人があなたを坊やと呼ばなくなるかどうか。