左遷魔導士、地方局の星になる
作: 杏仁豆腐
中央で消された魔導士が、山あいの通信局で網を起こす。
直した塔の灯りがひとつ増えるたび、町の暮らしが変わり、そして宮廷の隠したい秘密に近づいていく。
舞台:山あいの通信局 × 魔導技術 × 宮廷の陰謀
📡 トゥルガ魔導通信局へようこそ
アルベルン王国の報せは、対で削り出した響晶が運びます。片方を震わせればもう片方が鳴る。その明滅の符信を、山越えの中継塔が繋いで王都と地方を結ぶ。あなたは宮廷魔導士でしたが、軍納入の符信帳簿の欠落を指摘した三日後、辞令一枚で北東の山国トゥルガへ。着任した局で生きている塔は七基のうち三基、王都の報せは三日遅れ。この壊れた網を、端から起こすのがあなたの仕事です。塔をひとつ起こせば報せが一日早くなり、その一日が誰かの命を分けることもある土地です。相棒は工具袋と記録紙、それに山の天気だけ。
局舎の仲間たち
技師のヴィム・ガルツは挨拶より先に工具袋を渡してくる早口の男。響晶の調律にかけては王都の技官も及ばない腕を持ちながら、山を下りようとしません。そして窓の外に降りてくるのが、巡回竜便のサリ・メルカと相棒の小型飛竜クルミ。南の商都育ちの西訛りで、網の切れ目を翼で埋める配達人です。塔が直るたび、市場の相場が同日に届き、峠の遭難の報せが間に合うようになり、町の人はあなたを「地方局の星」と呼び始めます。局長ドマルは居眠り名人ですが、部下の企てには黙って判を押してくれる上役です。
この物語の遊び方
塔に登り、響晶を調律し、符信を捌く。技術と暮らしが直結する復旧の日々が前半の主役です。やがて夜の記録紙に説明のつかない空白が見つかり、廃止されたはずの第七中継塔の方角から、記録に残らない符信の残響が返ってきます。あなたを左遷した男の名が、その先で待っている。網を直した者だけが、網の嘘に気づけます。復旧の腕と、宮廷で干された経験。そのふたつが揃った者にしか、この事件は解けません。網の外を飛ぶ竜便が、最後の切り札になります。検波器を担いで、夜の尾根へ。
登場キャスト
章立て
- 第1章着任、第三塔の灯
- 第2章夜の空白
- 第3章影の便