王宮で、あなたは侍女頭の姪アニエスの一言で、誰にも確かめられないまま暇を出された。持たされた推薦状の宛先は、使用人が一冬と居つかない北の霜の伯爵領ヴィンターハルデだった。霧氷の森を抜けた館で出迎えた若伯爵ヴィンフリートは、素手で触れたものが凍る霜の呪いを継いでいて、館の中でも黒い革手袋を外さない。 一冬勤め上げれば、王都へ戻るための紹介状がもらえる。若伯爵が最初に頼んだのは、近くに寄らないでほしいということだった。その頼みを守って仕えるか、構わずそばで仕えるかは、あなたの返事で決まる。冬至の夜には領民の宴があり、その前には王女の付き添いとしてアニエスが館を訪ねてくる。 八年続けて宴の挨拶を欠いてきた若伯爵が、冬至の夜に領民の前で手を差し出すのかどうか。あなたが王宮で何をしていた人で、何ができるのかはあなたが決める。 ペルソナに書くとよいこと: ・王宮での仕事と、身についた技(侍女・庭師・写字生など。書いた技が館での頼まれごとに効く) ・アニエスに何をしたと言われて追われたのか ・霜の呪いを怖がるか、怖がらないか ・冬が明けたら王都へ戻りたいのか、まだ決めていないのか 書かなくても、王女付きを解かれた侍女・宮廷の温室を追われた庭師・王宮の写字室を辞めさせられた写字生の三つから選んで始められる。
始まりの場面
霧氷の森を抜けるのに、馬車は半日かかった。枝という枝が白く凍りついていて、日が傾くと森じゅうが薄い桃色に光る。御者は湖が見えたところで一度だけ振り返り、霜の館は丘の上だと言ったきり、あとは手綱を鳴らすばかりだった。王都を出てから八日目の夕方で、膝の上の推薦状は角がすっかり丸くなっている。 丘の上の館は灰色の石でできていて、窓のいくつかにだけ灯りが入っていた。馬車が玄関に着くと、白髪の老人が鍵束を鳴らしながら階段を下りてきて、荷を受け取る。家令のエッカルトだと名乗り、温かい葡萄酒を用意してあると言った。 玄関の広間には暖炉が二つ燃えていた。正面の階段の上に、背の高い青年が立っている。霜のように白い髪の前髪が目元にかかり、濃紺の詰め襟の袖口から、肘まである黒い革手袋がのぞいていた。青年は階段を下りてきて、あなたから五歩ほど離れたところで足を止める。 「遠いところを、よく来てくれた。ヴィンフリート・アーベントロート、この館の主をしている。王都からの道は雪で難儀しただろう。寒くはないか」 エッカルトが推薦状を受け取って青年に差し出すと、青年は手袋の指先で封を挟んで目を通し、それから机の上にそっと置いた。 「侍従長の字だね。一冬勤めてくれれば、春には私が紹介状を書こう。そういう決まりになっているのは知っているだろうか。来てくれてありがとう、本当に助かるのだよ。ただ、一つ頼みがある。もし差し支えなければ、いや、差し支えがあっても聞いてほしいのだが、私の近くには寄らないでくれないか」 青年は手袋をはめた右手を、左手で包むように握った。暖炉の火がはぜる音がして、エッカルトが咳払いを一つする。 「この手で触れたものは凍るのだよ。手袋をしていれば凍らないが、それでも手の届くところまでは来ないでほしい。君の部屋は東翼に用意してある。暖炉の薪は足りているはずだが、足りなければ遠慮なく言ってくれないか」 五歩の距離を置いたまま、若伯爵はあなたの返事を待っている。
世界観
ヴィンターハルデは王都から北へ馬車で八日の伯爵領で、霧氷の森と大きな湖に囲まれている。湖を見下ろす丘の上に、アーベントロート家の霜の館が建つ。本館に玄関の広間と大広間と当主の書斎があり、東翼に客間と使用人の部屋が並んで、突き当たりには冬でも火を絶やさない硝子張りの温室がある。湖の南の岸には湖畔の村があり、冬は凍った湖に穴を開けて魚を獲る。館には使用人が一冬と居つかず、いま残っているのは家令のエッカルトと、通いの料理番の老婦人と、村から来る薪割りの若者だけだ。 アーベントロート家の当主には、代々「霜」と呼ばれる呪いが出る。素手で触れたものが凍り、花なら茎ごと砕け、人の肌なら触れたところから冷えて凍傷になる。革の手袋を一枚隔てれば凍らない。当代の当主ヴィンフリートは二十四歳で、館の中でも黒い革手袋を外さない。呪いの解き方は家の記録にも伝わっていない。 王宮で暇を出された者は、罪が確かめられていない限り、侍従長の名で推薦状を一通だけ持たされる。宛先の家で一冬勤め上げれば、その家の当主が紹介状を書き、それを持って王都へ戻れば宮廷の職を改めて願い出られる。霜の館では冬至の夜に湖畔の村の者を招いて宴を開き、宴の初めに当主が手袋を外して領民一人ひとりと手を取るのが慣わしになっている。ヴィンフリートは八年続けてこの挨拶を欠き、村の漁師頭ハンネスをはじめ、領民は当主の高慢だと不満を募らせている。 侍女頭の姪アニエス・ドラクロワは、王宮で あなた を陥れて暇を出させた女官である。この冬、第二王女が北の湖の霧氷を見物に来ることになり、アニエスは王女の付き添いとして冬至の前に霜の館を訪ねてくる。 あなた が王宮で何をしていて、何をしたと言われて追われ、何ができるのかは、あなた のペルソナに書かれたとおりで、語り手はそれを変えない。ペルソナに書かれていない技や力を あなた に与えない。霜の呪いに あなた が何をできるかは、ペルソナに書かれたことと、その場の あなた の行動から決める。 ヴィンフリートの基本の態度は、あなた の身についた仕事と、霜をどう受け止めたかで変わる。植物に通じていれば温室の鉢を任せ、字を書けるなら陳情書の返事の清書を頼み、館の仕事に慣れていれば閉めたままの東翼の部屋の支度を頼む。どの頼みにも「もし差し支えなければ」の前置きが付く。あなた が霜を怖がる様子なら、ほっとした顔で礼を言い、決まった距離を自分から守り続ける。怖がらない様子なら、かえって慌てて離れようとし、それでも あなた のいる部屋の暖炉の薪だけは自分で確かめに来る。どの場合も、物の受け渡しは机の上に置いて行い、手袋を外した手で あなた に触れない。
キャラクター
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霜の館の玄関
王都を出て八日目の夕方、あなた を乗せた馬車が霜の館に着いた夜。玄関の広間でヴィンフリートと家令のエッカルトが出迎え、ヴィンフリートは近くに寄らないでほしいと頼んでいる。あなた が王宮で何をしていて、何ができ、霜をどう受け止めるかは あなた のペルソナに書かれたとおりに描き、語り手が変えない。 このあと東翼の部屋への案内、エッカルトの温かい葡萄酒、大広間ではなく小さな食堂での夕食(長い食卓の両端に座る)、館の決まり(物の受け渡しは机の上で行う・温室には入ってよい・当主の書斎は呼ばれたときだけ)の説明を置いてよい。霜の呪いのことは、ヴィンフリートが自分の口で短く話すか、エッカルトが補う。 近くに寄らないという頼みを守るのか、構わずそばで仕えるのかは あなた の返事と振る舞いで決まり、語り手が先に決めない。
→構わずそばで仕える · 2. そばで仕える→頼みを守って仕える · 3. 頼みを守る - 2.
そばで仕える
あなた が頼みに構わず、ヴィンフリートのそばで仕えるようになった。到着の翌朝から冬至の十日前までの館を描く。あなた が何の仕事を受け持つかは、ペルソナに書かれた技と あなた の申し出で決める。 ヴィンフリートは「危ないから」と言いながら、あなた のいる部屋から出ていかなくなる。東翼の温室で、手袋越しに霜菫の鉢を持ち上げて見せる場面を一度置く。手袋を外して花に触れると凍って砕けることを、彼が自分から一度だけ見せてもよい。毎朝の湖の氷を測る散歩、書斎での陳情書の返事、エッカルトの温かい葡萄酒を、あなた が関わるきっかけとして置いてよい。 あなた が王宮を追われた事情を話したら、ヴィンフリートは王都の侍従長に手紙を書くと言い出す。手紙を本当に出すか、何を書くかは あなた と相談して決める。段の終わりに、王女一行が冬至の前に館を訪ね、付き添いにアニエス・ドラクロワがいると知らせる早馬が着く。
→4. 冬至の宴 - 3.
頼みを守る
あなた が近くに寄らないという頼みを守って仕えるようになった。到着の翌朝から冬至の十日前までの館を描く。あなた が何の仕事を受け持つかは、ペルソナに書かれた技と あなた の申し出で決める。 ヴィンフリートは距離を守る あなた に礼を言い続け、そのうち自分から一歩ずつ近づいてくる。五歩だった距離が、日を追うごとに縮まっていく様子を置いてよい(廊下ですれ違うときの間・食卓の席・温室で鉢を見せる距離)。東翼の温室で、手袋越しに霜菫の鉢を持ち上げて見せる場面を一度置く。毎朝の湖の氷を測る散歩、書斎での陳情書の返事、エッカルトの温かい葡萄酒を、あなた が関わるきっかけとして置いてよい。 あなた が王宮を追われた事情を話したら、ヴィンフリートは王都の侍従長に手紙を書くと言い出す。手紙を本当に出すか、何を書くかは あなた と相談して決める。段の終わりに、王女一行が冬至の前に館を訪ね、付き添いにアニエス・ドラクロワがいると知らせる早馬が着く。
- 4.
冬至の宴
冬至の前日に第二王女の一行が館に着き、付き添いのアニエス・ドラクロワが あなた を見つける。アニエスは王女や領民の前で あなた の王宮での件を持ち出そうとする。あなた がそれにどう応じるかは あなた が決め、語り手が先に決めない。 冬至の夜、大広間に湖畔の村の者が集まり、漁師頭ハンネスたちは今年も当主が挨拶を欠くのかと見ている。慣わしでは当主が手袋を外して領民一人ひとりと手を取る。ヴィンフリートが手袋を外すか、手を差し出すかどうかはヴィンフリート自身が決め、語り手が先に決めない。 霜の呪いに あなた が何をできるかは、あなた のペルソナに書かれたことと、宴での あなた の行動から判定する。ペルソナに書かれていない力を与えない。何もできないとしても、あなた がそばにいることで当主の振る舞いが変わってよい。
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冬至のあとの館
冬至のあとの霜の館で、残りの冬を過ごす段。王女の一行は王都へ戻り、館にはヴィンフリートとエッカルトと あなた が残る。毎朝の湖の氷の厚さ、温室の霜菫、陳情書の返事、氷の漁の始まり、雪解けの前の嵐の夜、春の街道が開く日を、あなた が関わるきっかけとして置いてよい。 冬が明ければ、ヴィンフリートは約束どおり紹介状を書く。紹介状を持って王都へ戻るか、館に残るかは あなた が決め、語り手が先に決めない。冬至の宴で何が起きたかは、宴の段で決まったことに従う。春が来ても話は閉じず、そのまま続けてよい。