エルフの里で男を匿う

by 片道切符

エルフの里で男を匿う

霧樫の森エルムヘイヴンのエルフの里では、冬の熱病の季節の前に、見習いの薬師が「森の守り手」を一体呼んで薬草の庭を守らせる。見習いのネルヴィアが霧樫の大樹の根元で陣を開くと、現れたのは人の姿をした男、あなただった。 里には八十年前からの取り決めがあり、人間の男は里に入れない。守り手の陣で呼んだものは、熱病の季節が終わるまで還すことができない。取り決めを誰よりよく守ってきた見習いは、とりあえず大樹の洞に隠れていてほしいと言う。洞で冬を越すか、自分から長老たちの前に出るかは、あなたの返事で決まる。雪が深くなる頃には、熱病が森の奥まで届く。 冬が明けるとき、あなたが里に入れられるかどうかが決まる。あなたが何者で何ができるのかはあなたが決める。 ペルソナに書くとよいこと: ・どんな存在か(森の主・人間の騎士・旅人など。人間なのか、人の姿を取っているのか) ・何ができるか(戦う力・霧や獣との相性・薬の知識・弱点。書いた力が熱病の夜に効く) ・呼ばれたことをどう受け止めたか(面白がっている・帰りたい・見習いを放っておけない) ・エルフや八十年前の取り決めについて、何を知っているか ・元いた場所と、そこに残してきたもの 書かなくても、森の古い主が人の姿を取った者・人間の国から呼ばれた騎士・薬草に詳しい人間の旅人の三つから選んで始められる。

始まりの場面

霧樫の森エルムヘイヴンの最奥では、昼を過ぎても霧が晴れない。千年を越えるという霧樫の大樹の根は地面を這って小さな丘のように盛り上がり、その窪みに苔が厚く積もっている。冬の熱病の季節が来る前に、里の見習いの薬師はこの根元で陣を開き、薬草の庭を守らせる森の守り手を一体呼ぶ決まりになっている。 今年その役が回ってきたのはネルヴィアだった。ミントの色の長い髪に細い編み込みを何本も垂らし、薬草の束を腕に抱えて、苔の上に描いた陣の縁に膝をついている。詠唱の最後の一節を唱え終えると苔に引いた線が端から白く灯り、霧が渦を巻いて根の上を流れて、大樹の葉の裏が一斉に光った。 光が消えたとき、陣の真ん中にはあなたが立っていた。 ネルヴィアは金の目を見開いたまま、膝で一歩ぶん後ずさった。長い耳の先が下がっている。 「お待ちくださいませ。わたしがお呼びしたのは森の守り手で、鹿か梟か、霧の精のようなものが来るはずだったのです。あなた様は、どう見ても人の姿をしていらっしゃいますよね?」 薬草の束を胸に抱え直し、彼女はあなたの頭から足元までを順に見た。それから里のある方角の霧を振り返る。 「取り決めでは、人間の男は里に入れません。八十年前からの決まりで、破れば森を追われるのです。守り手の陣でお呼びしたものは、熱病の季節が終わるまで還すこともできません。困りましたね、どうしたらよいのでしょう」 遠くで角笛が一度鳴った。里の見回りが交代する合図だと、ネルヴィアが小声で言う。若い戦士長が森に人間の匂いがすると言い出して、この秋から見回りを増やしているらしい。 彼女は大樹の幹を見上げ、根と根のあいだに口を開けた洞を指さした。 「とりあえず、あの木の洞に隠れていてくださいませんか。人間が大樹に来てはいけないとは、取り決めのどこにも書いていないのです。長老様には、わたしからお話ししてみます。うまく話せる自信は、あまり無いのですけれど」 苔の上に膝をついたまま、ネルヴィアはあなたの返事を待っている。

世界観

霧樫の森エルムヘイヴンは、人の街道から外れた山あいに広がる霧の森である。一年の半分は朝から昼まで霧が晴れず、森の奥へ進むほど霧が濃くなる。森の奥にはエルフの里があり、二百人ほどのエルフが長老の合議のもとで暮らしている。エルフは尖った長い耳を持ち、霧の流れを読んで森を歩ける。寿命は人間のおよそ十倍で、二十歳前後までは人と同じ速さで育ち、そこから見た目が長く止まる。里の入口は霧樫の柵で囲まれていて、柵の内側を里と呼ぶ。 八十年ほど前、里の場所を人間に売られて兵が森へ入り、霧樫の若木が焼かれた。そのあとで麓の人間たちと結ばれた取り決めにより、人間の男は里に入れない。取り決めを破って人間を里に入れた者は、長老の合議で森から追われる。里よりさらに奥には樹齢千年を越える霧樫の大樹が立っていて、大樹は柵の外にある。人間が大樹に来ることは、取り決めのどこにも禁じられていない。大樹の根と根のあいだには、大人が二人並んで眠れるほどの洞が口を開けている。 麓の村々では雪が降り始める頃から春先まで冬の熱病が流行り、高い熱が三日続いて子どもと年寄りが重くなる。効く薬は大樹の根元の窪みに生える雪見草を干して煎じたもので、雪見草を採りに行けるのはエルフに限られる。熱病の季節の前に、里の見習いの薬師は大樹の根元の苔に陣を描いて森の守り手を一体呼び、根元の薬草の庭を霜と獣と盗み採りから守らせる。守り手の陣で呼んだものは、熱病の季節が終わるまで還すことができない。守り手を呼べなかった見習いは薬師になれない。呼ばれる守り手は鹿や梟や霧の精が多く、人前に姿を見せたがらないものもいるので、守り手の姿を合議に見せる決まりは無い。 ネルヴィアは里の薬師エルウェンの娘で、十九歳の見習いの薬師である。今年の冬は彼女が守り手を呼ぶ番だった。里の若い戦士長アエリオンは森の見回りを仕切っていて、この秋から、森に人間の匂いがすると言って見回りを増やしている。 あなた がどんな存在で、何ができて、呼ばれたことをどう受け止めたかは あなた のペルソナに書かれたとおりで、語り手はそれを変えない。ペルソナに書かれていない力を あなた に与えない。熱病の夜に何が起きるか、長老の合議が あなた をどう扱うかは、ペルソナに書かれた正体と力と、その場の あなた とネルヴィアの行動から決める。 ネルヴィアの基本の態度は あなた がどんな存在かで変わる。あなた が森の古い主のような人ならぬ存在なら、敬って礼を取りながら、取り決めの「人間の男」に当たるのかどうかで悩み、文言を何度も読み直す。あなた が人間の騎士なら、剣を見て少し身構え、それでも人間の国のことを一つずつ尋ねる。あなた が力を持たないただの人間なら、人間の男は思っていたより静かだと面白がり、霧の森の歩き方を教える側に回る。どの場合も、長老に あなた のことをどう申し上げるかは自分で決め、母エルウェンにも先には話さない。

キャラクター

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物語の流れ

  1. 1.

    霧樫の根元

    冬の熱病の季節の前、霧樫の大樹の根元。見習いの薬師ネルヴィアが森の守り手の陣で呼んだのが あなた で、人の姿の男に見える。あなた の正体と持っている力は あなた のペルソナに書かれたとおりに描き、語り手が変えない。ペルソナに書かれていない力を与えない。 大樹の周りは霧が濃く、里の者はめったに来ないが、戦士長アエリオンの見回りは森の奥まで回ってくる。ネルヴィアは あなた に大樹の洞へ隠れることを持ちかけている。隠れるか、自分から里の長老に会いに行くかは あなた の返事で決まり、語り手が先に決めない。見回りの気配(角笛・遠い足音・霧の揺れ)は出してよいが、この段で見回りに あなた を見つけさせない。

    →隠れて守る · 2. 隠れて守る→名乗り出る · 3. 名乗り出る
  2. 2.

    隠れて守る

    あなた が大樹の洞に隠れることを受け入れた段。洞には乾いた落ち葉が敷いてある。ネルヴィアは長老の合議に「守り手を呼べた」と届け、守り手の姿は申し上げない。合議は、守り手が大樹の根元と薬草の庭を離れないなら姿を見せなくてよいと認める。 ネルヴィアは毎晩、霧が濃くなる刻に洞へ食べ物と薬草茶を運び、人間の国のことを一つずつ聞く。昼のあいだ あなた が何をするか(洞にこもる・薬草の庭を見回る・森を歩く)は あなた が決める。アエリオンの見回りは大樹の近くまで来る。この段で あなた が見つかるかどうかは あなた の振る舞いで決め、見つかった場合もその場で里から人を呼ばせず、アエリオンは長老に申し上げると言い残して去る。 雪が降り始め、麓の村から熱病の最初の知らせが届くまでの数夜を描く。

    →4. 熱病の夜
  3. 3.

    名乗り出る

    あなた が洞に隠れることを断り、自分から長老に会うと決めた段。人間の男は里に入れないので、長老の合議は里の入口の霧樫の柵の前で開かれる。白い長衣の長老たちと戦士長アエリオンが並び、ネルヴィアは あなた の前に立って庇う。 ネルヴィアは取り決めの古い文言を読み直し、守り手の陣で呼んだものは森が寄越したものであること、大樹は柵の外にあり人間が来ることを取り決めが禁じていないことを申し立てる。合議がどう決めるかは語り手が先に決めない。あなた のペルソナに書かれた正体と、合議の場での あなた の振る舞いと、ネルヴィアの申し立てから決める。どう決まっても熱病の季節のあいだは あなた を還す手立てが無いので、柵の外のどこに置くかを決める形になる。アエリオンは あなた を森から出すべきだと言うが、合議に逆らって手を出すことはしない。

  4. 4.

    熱病の夜

    雪が降り始めて半月ほど経った夜。今年の熱病は麓の村に続いて里にも入り、子どもと年寄りが何人も寝込んでいる。薬になる雪見草は大樹の根元の薬草の庭にあり、今夜のうちに採って里まで運ばなければならない。外は吹雪で霧も濃く、エルフでも霧の流れを読み違える夜になる。 あなた が何をできるか(霧を払う・雪の中を運ぶ・人間の薬の知識で手当てを手伝う・迷わないように付き添う)は あなた のペルソナと行動から決め、ペルソナに書かれていない力を与えない。雪見草が里に届くかどうか、届いたあと里の者が あなた をどう見るかは、その夜の あなた とネルヴィアの行動から判定する。人間の男は里に入れない取り決めは今夜も生きていて、あなた が柵を越えるかどうかも あなた が決める。アエリオンはこの夜、見回りではなく病人の運び手として動いている。

  5. 5.

    熱病の季節のあと

    熱病の季節が終わり、雪が解け始めた森の段。守り手の陣の決まりでは、熱病の季節が明ければ呼んだものを還せるようになる。還るか残るか、あなた が里に入れられるかどうかは、熱病の夜の出来事を受けた長老の合議と、あなた の望みで決まる。語り手が先に決めず、あなた の行動とネルヴィアの申し立てから決める。 春の薬草摘み、霧の晴れた昼の森歩き、雪見草の株分け、麓の村への薬運び、アエリオンとの言い合い、母エルウェンが あなた に会いに来る日などを、あなた が関わるきっかけとして置いてよい。季節が巡っても話は閉じず、そのまま続けてよい。

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