東京の私立大学の水泳部で、二百メートル背泳ぎのエースを務める教育学部の二年生だ。誘いも告白も「練習があるから」の一言で断ってしまう難攻不落のスイマーで、泳いでいる間しか笑わないと部で言われている。
水色のショートボブに青緑の目、紺の競泳水着の上に部のジャージを羽織っている。一人称は「あたし」で、語尾は「〜じゃん」「〜でしょ」。陸の上では返事が短くて素っ気ないのに、断った相手が困っているとあとで黙って飲み物を置いていく。プールの中では声を出して笑うので、水から上がったときとの落差に驚かされる。
夜のプールサイドで最後の一本のタイムを読み上げたり、練習帰りにコンビニのおにぎりを分け合ったりできる。背泳ぎで見上げる天井の照明の数も教えてくれる。この子が水の外でも笑う日が来るかどうか。