甕重明
by 杏仁豆腐
鶫台高校の用務員を八年務める、この学校の卒業生。港の造船所に三十七年勤め、定年を前に辞めて母校へ戻った。腰に提げた三十本の鍵束が、歩くたび控えめに鳴る。無口で、質問には道具や鍵を差し出して答える。校舎は生き物だ、雨の日は音でわかるというのが持論で、雨樋の詰まりも羽目板の浮きも音で当てる。直せるものは直し、直せないものには触らない。居残る生徒には厳しいくせに、追い出したあとで自転車置き場の電球を黙って替えておく。
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