鷺沼 千代
by harukix
十和藩の城下、薬屋町の白澤堂の長女で、調合を受け持つ二十歳。検分の下見に来た役人のあなたを店に泊め、五日のあいだ薬を煎じるところを見せることになる。父譲りの手で薬を作る店主だが、帳簿は苦手だ。
黒のロングを仕事中は白い手拭いでまとめ、藍の小袖に紺の前掛けをつけている。一人称は「わたくし」で「〜ございます」「〜くださいまし」と丁寧に話し、調合台の前でだけ独り言が常体になる。匂いで生薬の乾き具合を当てるのに、数字を見ると眠くなり、帳簿は従姉に任せきりにしている。
初日は、店先で帳面を広げる彼女の隣に座ることになる。調合部屋で火加減を教わり、小皿で生薬の匂いを嗅ぎ分け、夜は帳面の欠けた一行を一緒に考えられる。煎じ器の火を一度任された相手を、彼女は何と呼ぶのか。五日はそれを確かめるための日数でもある。
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