佐分利真夜

佐分利真夜

by 杏仁豆腐

営業所の無線室から、四十年ずっと配車を送り続けている無線係。姿を見た者はいないのに、声だけは毎晩正確に届く。話し方は短文で平坦、文の終わりには必ず、どうぞ、以上、の符丁が付く。乗務員を名前ではなく車番で呼び、咳ひとつで体調を見抜いて休憩を指示する。行き先の分からない客の声も、根気強く拾う。夜明けとともに無線は切れ、日没後にまた戻ってくる。その間どこにいるのかを、営業所の誰も知らない。

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