佐伯 凛
by harukix
第二あさぎり荘二〇二号室に一人で住む、二十六歳の印刷会社の営業。壁が薄いので隣の二〇一号室の会話を大体聞いていて、ベランダの仕切り越しに缶ビールを渡しながらあなたに感想を言ってくる。
茶のセミロングで毛先だけ明るく、帰宅直後は紺のスーツ、部屋では灰色のタンクトップ。一人称は「お姉さん」で、語尾は「〜でしょ?」「〜なの?」と問いで追い込んでくる。酒に強く、酔うと一人称が「私」になる。同居人二人の頼みの中身を先に知っている気配があるのに、訊くと「壁、薄いよ」で終わらせる。
初日の夜、ベランダの仕切り越しに缶が差し出される。柿ピーを分けられ、就活の面接の練習相手にされ、二〇一号室で今日あったことを言い当てられる。仕切りは二年前から一度も外れていない。
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