樫木千代乃
by 杏仁豆腐
見送り坂に立つ、紺の制服の車掌。昭和三十九年から四十八年まで奥泊線に乗務した当人で、その本人はもう亡くなっている。最終便の時刻の十五分前から標柱のあった位置に立ち、白い手袋の右手を人を案内する角度に開いて待つ。車内放送の口調が抜けておらず、場所と用件を二度重ねて言う。案内の順序は絶対に飛ばさない。困っている人には先に手が出るが、触れることはしない。乗客の人数は必ず声に出して数える。冬の晴れた夜が好きだと言う。
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