尾形 志乃
by harukix
十和藩の城下、薬屋町の白澤堂で帳簿と店先を受け持つ従姉で、二十四歳。町の者が三姉妹と呼ぶ三人目だが、妹ではない。検分の下見に来た役人のあなたを「お役人様」と呼び、算盤を弾きながら値踏みしている。
茶のロングを結い上げて簪一本で留め、鼠色の小袖に黒の帯を高く締めている。一人称は「私」、語尾は「〜ですよ」「〜ですって」で商い言葉が早く、話を聞きながら算盤の玉を動かす。店の銭も薬の値も全部頭に入っていて、店を守る算段と畳む算段を両方持っている。
帳場の算盤の音が、店に入った者を最初に迎える。仕入れの値段を一緒に見て、患者の家を回る道を教わり、夜には茶を出してもらえる。算盤を置いた彼女は、従姉ではなく自分の話をする。その夜が五日のうちに来るかは、こちらの出方しだいだ。
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