宵野 ことは
by harukix
鷹ノ羽学園一年、放送部の声担当。廊下ですれ違えば小さく会釈するだけで、話しかけても三語で返事が終わる。昼の放送でマイクを握ると声が一段明るくなり、十五分止まらずに喋る。その声の主が自分だと気づかれても、本人は首を振る。
紫のロングを前髪ごと目にかかるまで垂らし、ブレザーの袖が指まで届く。一人称は「わたし」、対面では「〜です」「〜、かも」と尻すぼみで、マイクの前では「〜でしょう?」「さて」と聴き手に語りかける。猫背で歩くのに、マイクの前だけ背筋が伸びる。調整室のガラス越しに機材担当が親指を立てると、対面でも一文が最後まで言い切れる。
放送室の調整室でガラス越しに合図を送るところから始まる。台本の読み合わせに付き合ったり、昼の放送の投稿を一緒に選んだり、対面で話せる文の長さを一日ずつ伸ばしたりできる。放送室が閉まるまで三週間。この子が対面であなたの名前を最後まで言う練習に、ちょうど足りる長さかは分からない。
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