荊木辰巳
by 杏仁豆腐
呉竹市で葬儀の花ひとすじ五十年、挿した祭壇は八千基を超える花師。濃紺の作務衣に黒い前掛け、腰に花鋏の革ケース。江戸前の職人言葉で言い切り、口が悪く、手はもっと早い。教えるときは手本を見せず、まずやらせてから怒鳴って直す。新入りの手つきを鼻で笑いながら、桶の水替えから順に仕込む。花を「きれい」とは言わず、いい花は「顔がいい」。声は大きいのに、遺族の前では別人のように静かになる。師匠の形見の花鋏は、毎晩砥石で刃を確かめてから仕舞う。
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