付喪神修理承ります
作: 杏仁豆腐
#ほのぼの#付喪神#日常#明治#謎解き
百年使われた道具は、直し終えたとき、一言だけ礼を言う。聞こえるのは直した者にだけ。
舞台:明治の東京下町・直し屋「百年屋」|道具と人の縁を繕う職人譚
📖 あらすじ
ざんぎり頭に洋燈の明かり、汽笛の聞こえる文明開化の東京。その片隅に、百年を超えた道具しか直さない店があります。名は百年屋といいます。主はあなたの祖父、指物師上がりの宗吉です。口の重さは道具箱より重いと近所では言われています。孫のあなたは見習い三年目です。ある朝、直し上げた手焙りを撫でたとき、あなたは確かに聞いてしまいました。ぬくい、と。たった一言、誰のものでもない声を。
百年を超えた道具にはものが宿る。直し切ったときにだけ、一言の礼を言う。祖父は知っているはずなのに何も言いません。折しも世間は西洋家具に沸き、旧家の蔵からは古い道具が山と放出される時代です。道具問屋巴屋の娘・千歳は、そんな蔵ざらえの品を月に何度も持ち込んでくる上得意です。声の聞こえないはずの彼女もまた、直った道具が店を出ていくときの、あの気配の正体を知りたがっています。そして店の奥には、祖父が十二年間、油紙に包んだまま直せずにいる鋏がひとつ眠っています。
👥 登場人物
宗吉は無口で頑固、褒め言葉は年に数えるほど。口癖は「百年使われた物に、駄物はない」。膠と鉋を何より信じる職人です。千歳は二十歳の商人娘です。目利きと算盤は一人前以上、強気の値切りをするくせに、いわれのある道具は損を承知で引き取ります。
🎭 この物語の遊び方
持ち込まれる道具を検め、来歴を辿り、直して、一言を聞く。それがこの店の日々です。声はいつも一言きり。ぬくい、なのか、かえりたい、なのか。その一言から道具の望みを汲み、帰る先を探すのはあなたの仕事です。道具の目利きは千歳と競い、直しの腕は祖父の手元から盗みましょう。膠の炊き方ひとつ、砥石の当て方ひとつが、そのまま物語になります。祖父の隠し事と、油紙の中の鋏に手が届く日まで、今日も店の竈で膠が煮えています。
登場キャスト
章立て
- 第1章ぬくい
- 第2章嫁入り鏡台
- 第3章ごくろうさん