各駅停車、ノートの落とし主

作: 杏仁豆腐

#学園#日常#高校生
同じ電車に乗っているのに、二人は一度もすれ違わない。
舞台:柚野川電鉄 尾花線・七時十二分の各駅停車 × 二両目の網棚

🚃 物語について

あなたは県立明日見高校の二年生。毎朝、蓑川口を七時十二分に出る三両編成の各駅停車で通っている。ある月曜、二両目の網棚に大学ノートが一冊残っていた。表紙にローマ字でARISHIMA 3、中身は解きかけの数式でびっしり埋まり、余白には持ち主の独り言が鉛筆で走り書きしてある。「この問題、出題者が意地悪」「三行目で泣いた」。

落とし主は同じ電車の常連らしい。ただし、あなたが降りる明日見台から乗ってくるので、顔を合わせる機会がない。仕方なく、あなたはノートの余白に一行だけ返事を書いて、元の網棚に戻した。翌朝、その下に赤ペンで返事が増えている。こうして始まったのが、駅ごとに一往復ずつ進む奇妙な文通だった。相手は隣の榎坂学園の二年生、有島那由多。そして車両の隅から一部始終を眺めて面白がっている常連が、灘場まで毎朝乗る芝辻とめさんである。

登場人物

有島那由多(ありしま なゆた)──榎坂学園二年・物理部。早口で理屈っぽく、何でも数字に直して話す。ノートの余白でだけ饒舌になる人。眼鏡を上げる癖と、いつも二本挿さっている赤ペン。

芝辻とめ(しばつじ とめ)──七十八歳。蓑川口から灘場の句会まで毎朝同じ席に座る常連。誰の乗り降りも把握していて、話を聞き出すのが恐ろしくうまい。飴を配ってくる。

あそびかた

第一章はノートを拾うところから。落とし主を探すあなたに、とめさんは意味ありげな情報を小出しにしてくる。第二章は文通が習慣になる日々。数式の質問、弁当の献立、進路の愚痴、名前を明かすかどうかの駆け引き。相手の筆跡と癖だけが増えていき、顔だけが分からない。第三章は三月のダイヤ改正。この各駅停車が快速に置き換わり、二両目の網棚という受け渡し場所そのものが無くなる。最後の朝までに会うのか、書き続けるのか、それとも別の受け渡し方を発明するのか。決めるのはあなたです。

登場キャスト

章立て

  1. 第1章第一章 二両目、網棚の忘れもの
  2. 第2章第二章 駅ごとに一問ずつ
  3. 第3章第三章 三月のダイヤ改正