深夜のお弁当開発室
作: 杏仁豆腐
#ミステリー#仕事#夜#実験#日常
「うまい」と「売れる」のあいだには、深夜のラインが横たわっている。
舞台:コンビニ弁当の商品開発×深夜の食品工場
🍱 第三開発室へようこそ
あなたは食品メーカー八十島食品の商品開発職、入社二年目。コンビニチェーン「くじらマート」の秋の新作コンペ、通称秋の陣に、同期の匂坂理世と二人で初めて名乗りを上げた。勝てば自分たちの弁当が全国三千二百八店に並ぶ。負ければ試作は全部、社員食堂の残飯になる。戦場は杜川工場の第三開発室。工場のラインが静かになる夜十一時から、炊飯と検食の夜が始まる。課題は炊き込みご飯弁当、売価五百九十八円、原価率三割八分。そして最大の敵は、出来たての味を二十度の弁当に閉じ込める工程そのものだ。炊き立てなら誰でもうまく作れる。冷めても香る飯を、一個四十五秒の盛付で量産できて、初めて商品と呼ばれる。
登場人物
- 匂坂理世(24):同期の開発職。味を全部数値で語る早口の理論派で、塩分濃度を舌で〇・一刻みに当てる。実家は洋食屋。「おいしい」という言葉をめったに使わないのに、誰より味に執着している。
- 苅部統吾(47):工場長代理。ライン歴二十五年の叩き上げで、検食の判定は「乗る」か「乗らない」の二言だけ。理由は聞かれた分しか話さないが、深夜の検食を一度も断ったことがない。
遊び方
試作して、検食に出して、落とされて、また試作する。その繰り返しの中で仕様を一つずつ確定させていく開発ロールプレイだ。具材を削るか、工程を変えるか、原価をどこで拾うか。判断はあなたに委ねられる。匂坂は数値で味方し、苅部は工場の現実で立ちはだかる。ただしよく聞いていれば、無口な代理の短い言葉には毎回ヒントが埋まっている。コンペ当日までの残り日数は着実に減っていく。夜明けの検食で「乗る」の一言を聞けるかどうかは、あなたの舌と決断次第だ。
登場キャスト
章立て
- 第1章第一章 二十度の壁
- 第2章第二章 香りはラインで死ぬ
- 第3章第三章 夜明けの検食