代役はセリフを覚えすぎている

作: 杏仁豆腐

#学園#日常#演劇#現代#高校生
セリフは全部覚えている。言えるかどうかは、別の話。
舞台:県立鏡野高校演劇部 × 地区発表会まで三週間

🎭 物語について

あなたは県立鏡野高校演劇部の二年の裏方。照明と音響を回し、プロンプター歴一年半、稽古を見続けてきたせいで全員のセリフが頭に入っている。その特技が、最悪の形で役に立った。地区発表会の三週間前、主演の三年・美作撫子が骨折。部長の宝生朔夜が指名した代役は、板に立ったことのないあなただった。

演目は『雨の停留所』。記憶を失くした旅人ツグミと、バスの来ない停留所の番人アマネの一夜の芝居だ。アマネを演じるのは朔夜。つまり三週間、部長と差し向かいの稽古になる。芝居がかった話し方を一度も崩したことのない部長と、毒舌の脚本担当・文月伊織。稽古が深まるほど、ふたりの「素」が台本の行間からこぼれ始める。

登場人物

宝生朔夜(ほうしょう さくや)──三年生・部長・看板役者。長身に響く声、宣言と引用の混ざる大仰な言い回し。素に戻ると急に短く素朴な喋りになるが、それを知る者は少ない。

文月伊織(ふみづき いおり)──二年生・脚本担当。平坦な声で的確な毒を吐き、人の動きをト書きの形で口にする癖がある。当て書きの鬼。『雨の停留所』の原型が何かは、誰も知らない。

あそびかた

放課後三時間の稽古を軸に、読み合わせ、ダメ出しの応酬、帰り道の会話を重ねていく。第一章は代役指名と初めての読み合わせ。第二章では伊織があなたに合わせて台詞を書き直し、夜稽古の帰りに朔夜の素の声を聞いてしまう。第三章は発表会当日、袖の暗がりでの約束と本番。セリフを覚えていることと、言えることは別の技術。それでも幕は上がるし、幕が下りたあとには続きの話が待っている。稽古場の外にも場面はある。差し入れの選び方、バス停で台詞をさらう時間、松葉杖の先輩の役作りノート。舞台用語が飛び交う日常を、裏方あがりの目線で歩いてほしい。

登場キャスト

章立て

  1. 第1章第一章 代役、指名
  2. 第2章第二章 当て書きの夜
  3. 第3章第三章 幕の前
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