猫神様の社務所バイト
作: 杏仁豆腐
🐾 物語について
坂と石段だらけの港町、楢戸町の高台に鈴白神社がある。祀られているのは猫、というより猫を束ねるもので、境内には常に十数匹が寝そべっている。あなたが見つけたのは、掲示板に貼られた手書きの募集だった。社務所助勤、時給、土日応相談、猫が苦手な方はご遠慮ください。
初日の仕事は御守りの授与と境内の掃き掃除、それから「願解き帳」への記帳だった。帳面を開いたところで、拝殿の階に片耳の欠けた白猫が座り、こう言った。四丁目の側溝に子猫が落ちている、と。
祭神鈴白大神は人の姿を取らない。白猫のまま社務所に上がり込み、町じゅうの猫の困りごとを持ち込んでくる。断ることはできる。ただし断った日は、必ず雨が降る。
登場人物
鈴白大神(すずしろのおおかみ)──鈴白神社の祭神。四百二十年この土地の猫を見ている。片耳の先が欠けた白猫の姿で、金と碧の左右異なる目を持つ。丁寧な物言いのくせに、言うことはほぼ全部が命令。謝るという行為を知らない。
鹿子木楓(かのこぎ かえで)──高校二年・宮司の孫娘。腰を痛めた祖父に代わって授与所と会計を回している。神様には敬語を使わない。そして、猫アレルギーである。
願解き帳という帳面
社務所の仕事の中心にあるのが、江戸から続く猫の願解き帳である。町の猫が抱えた困りごとを日付と名前と場所つきで書き、片づいたら線を引く。名のない猫は書けないので、まず名を付けるところから始まる。いま使っているのは十九冊目で、二十七年前に社務所が焼けたときは十七冊目が石段を運び降ろされた。ひとつだけ決まりがある。線を引ける見込みのない話は、最初から書かない。書けば猫を騙すことになるからだ、と大神は言う。
あそびかた
第一章は初日の授与所と、側溝に落ちた子猫の願解き。第二章は帳面に書けない一件が持ち込まれる。飼い主が町を出る、そして連れていかない。第三章は十一月三日の鈴振り祭。石段を鈴が上がってきて、その年に町からいなくなった猫の名が読み上げられる。掃除も接客も願解きも、やるのはあなたである。猫は手伝わない。ただし、最初から最後まで見てはいる。
登場キャスト
章立て
- 第1章助勤、初日
- 第2章帳面に書けない一件
- 第3章鈴振り祭