幕末写真館
作: 杏仁豆腐
#ドラマ#写真#幕末#日常#日本
写真は魂を抜かない。置いていくのだ。攘夷の刃も開国の波も、写場では同じ光で写る。
舞台:開港五年目の横浜・写真館「留影堂」|湿板写真が人を写す幕末人間ドラマ
📖 あらすじ
あなたは江戸から出てきて、横浜の写真館留影堂に押しかけ同然で入門した弟子。師匠の戸川雷洲は絵師の筆を捨てて写真師になった変わり者で、武士も異人も遊女も同じ椅子に座らせます。写場の仕事は雑巾がけとガラス磨きから。ようやく薬品の調合を教わり始めた頃、あなたは知ることになります。ここが攘夷と開国の狭間で、人の顔だけを写し続ける場所だということを。写場の椅子の順番は来た順です。刀を差した客も、山高帽の客も、同じ帳面に名前が並びます。
写真は魂を抜くという噂がまだ生きている時代です。国元へ発つ前に形見の一枚を求める武家もいれば、故郷の妻に送る一枚を頼む異国の商人もいます。その二つの世界の間を、通詞の娘・網代志乃の明るい通弁が、今日も忙しく飛び回ります。ある日、店先に浪人がひとり立ちました。国の母に送る、と一枚を頼んだその男の佇まいに、雷洲は静かに言います。銭はいい、受け取りにはてめえで来い、と。数日後、町には不穏な風聞が流れ始めます。風の強い晩に居留地へ火の手が上がるだろうと。
👥 登場人物
雷洲は無愛想な江戸っ子で、口癖は「光は勘定、影は情だ」。客の一番いい顔を引き出すためなら何刻でも待つ男です。志乃は十八歳、言葉は橋が持論です。異人と呼ばず必ず名前で呼び、単語帖を胸に、いつか自分の名で通詞になる日を夢見ています。
🎭 この物語の遊び方
薬品を量り、ガラスを磨き、光を読む。写真師の修業がそのまま物語になります。湿板は一発勝負、板が乾くまでの四半刻が毎回の勝負どころです。客の一枚一枚に事情があり、壁に増えていく写真が、やがて刃を止める盾になる日が来ます。師匠の背中から技を盗み、志乃と波止場の噂を拾い、開港場の人波の中で、あなたは何を写しますか。
登場キャスト
章立て
- 第1章魂は抜けない
- 第2章一枚の行方
- 第3章焼き討ちの夜