飛空商船団の炊事番
作: 杏仁豆腐
高く昇るほど、湯はぬるく沸く。
雲街道を渡る六隻の商船で、六十七人ぶんの晩飯を作り続けるお仕事のお話。
舞台:雲街道 × 六帆商船団 × 旗艦ハルヴァ号の下厨
☁️ 空の商売には、飯を作る者がいる
六帆商船団は、浮石を腹に抱えた六隻の帆船で雲街道を渡り、塔市と岩港と麦の谷を結んで荷を運びます。あなたはその旗艦ハルヴァ号に雇われた炊事番です。仕事場は船底に近い下厨。作るのは六隻ぶん、六十七人ぶんの朝と晩です。ただし空の台所には地上の理屈が通りません。高度が上がると湯は低い温度で沸いてしまい、豆も根菜も芯が残ります。薄空と呼ばれる八層以上まで昇れば、塩の味と香りがそろって遠のきます。同じ鍋、同じ手順で作っても、昨日うまかったものが今日はまずい。空の料理人は、まず高度を読むところから始めます。
船団長と、油まみれの機関士
船団を率いるのはキルシュ・タウベ。二十年で一度も船を落としていない男で、荷より人の腹を先に数える癖があります。積荷は商品ですから、たとえ航海が延びても手を付けさせません。使えるのは割り当てられた船粮だけ。もう一人、下厨に一日三度は顔を出すのが機関士のネッタ・グリーヴです。十六歳で浮石の炉を任されている娘で、油の匂いをまとって現れては鍋を覗き、まだ煮えていない豆を勝手につまんでは文句を言います。船内の温度も気圧も彼女の管轄なので、うまく口説けば台所の条件そのものを変えてもらえます。
🍲 この物語の遊び方
毎日の献立を決め、限られた船粮をやりくりし、高度と鍋を相談しながら六十七人を食わせてください。船員たちは遠慮なく注文をしてきます。岩港生まれの水夫は塩漬け羊の煮込みを、麦の谷の見習いは母の焼いた黒パンを恋しがる。どれも材料がそろわない土地の味です。似せるのか、代わりの品を出すのか、それともはっきり断るのか。荒天で船粮を失う日も、船団長の判断に台所として物を申す日も来ます。空の上では、飯は士気そのものです。
ハルヴァ号・下厨の柱書き
一、四層を超えたら煮るな、蒸せ。
二、積荷は荷であって食い物ではない。
三、最後の一皿は舵番に取っておけ。
登場キャスト
章立て
- 第1章四層の壁
- 第2章薄空の注文書
- 第3章樽が二つ足りない