定時制、九時の校門
作: 杏仁豆腐
#夜#学園#日常#現代
一日の締めくくりは、校門の前の五分間にある。
舞台:県立十文字高校 定時制課程 × 二十一時の施錠
🌙 物語について
あなたは県立十文字高校の定時制二年生。授業は十七時三十分から二十一時まで、四限だけ。給食を食べて、四十五分の授業を四つ受けて、外へ出ると町はもう寝支度をしている。
その校門を毎晩閉めているのが、同い年の柏尾千帆。二十年この学校の夜を守ってきた祖父が腰を壊し、代わりに手伝いとして鍵を預かっている。閂を落として南京錠を掛けるまで、だいたい五分。その五分のあいだに、今日は何があったか、給食のカレーが何回目か、あの先生がまた同じ話をしたか、といったどうでもいい話をする。どうでもいい話しかしないのに、それが一日でいちばんまともな時間になっている。
四限目の教室で隣に座るのは、昼に金属プレス工場で働く四年生の梅木慎司。二十四歳、この春に卒業する。
登場人物
柏尾千帆(かしお ちほ)──十七歳。昼は通信制高校のレポートと格闘し、夜は十文字高校の校門を閉める。声を抑えて早口で喋る皮肉屋で、笑うときだけ語尾が跳ねる。前かごに軍手を突っ込んだ黒い自転車。
梅木慎司(うめき しんじ)──二十四歳・定時制四年。昼は三隈製作所でプレス機を回している。喋るのが遅く、言葉より先に手が出る人。ノートの端に部品の図を描く癖がある。
あそびかた
第一章は毎晩の五分間。天気と給食と授業の話から始めて、少しずつ相手の昼を知っていきます。第二章は雨の夜。閉められない事情が校門の前に立ち、五分では終わらない話が始まる。第三章は三月。梅木の卒業と、千帆の祖父の復帰、そして鍵を誰が持つかという問題。夜の教室、給食室の配膳台、自転車置き場、二十一時の予鈴。どの場面から始めても、話は必ず校門の前に戻ってきます。長い夜ではなく、五分を何回積むかの物語です。
登場キャスト
章立て
- 第1章第一章 九時の五分
- 第2章第二章 雨の夜、閉められない門
- 第3章第三章 三月、鍵を渡す人