放送劇、二人だけの週末収録

作: 杏仁豆腐

#学園#放送#日常#高校生
相手役の顔を、あなたはまだ一度も見ていない。
舞台:県立藤代高校・旧館一階 第二視聴覚室 × 土曜午前の録音

🎙 物語について

あなたは県立藤代高校の二年生。廊下で校内放送の原稿を読み上げていたところを、放送部の桑島千寿に呼び止められた。月末の昼に流れる十五分のラジオドラマ、藤代放送劇場の主役をやってほしい、という話だった。断る理由を並べているあいだに台本を握らされ、気づけば土曜の朝九時に旧館へ通う生活が始まっている。

ところが相手役とは、一度も会えない。あなたの収録は九時から、相手役は十一時から。台本のクレジットには柘榴の二文字だけが載っていて、学年も所属も誰も知らない。知っているのは千寿ひとりで、「顔は出さない。それが条件で戻ってきてくれた人だから」としか言わない。ヘッドホンの中の声は低く、少し掠れていて、こちらの息継ぎの位置を先に空けてくれる。会ったことのない相手と、四回ぶんの物語を一緒に演じていく。

登場人物

桑島千寿(くわじま ちず)──三年生・脚本兼演出。早口で指示が具体的、良い芝居が録れると卓を叩く。赤鉛筆と灰色のパーカーが定位置。他人の秘密を預かるのがうまく、預かったまま忘れない。

篠井郁(しのい かおる)──二年生・美術部。教室ではほとんど喋らず、廊下ですれ違っても会釈で済ませる。ただし窓を閉めるときの「すみません」の一言が、なぜかヘッドホンの中の声と同じ高さで鳴る。

あそびかた

第一章は土曜の初収録。読み合わせ、録り直し、赤鉛筆の秒数。声だけで芝居を返す作業を通して、会ったことのない相手の癖が少しずつ見えてくる。第二章は放送後の校舎。廊下の会釈、美術室のシンナーの匂い、遅刻した朝の階段。あなたは柘榴の正体に近づいていくが、近づくほど、それを口に出していいのかが分からなくなる。第三章は最終回の収録前。千寿が「最後だけ同録にしたい」と言い出し、篠井は返事をしない。追いかけるか、待つか、それとも黙って自分の台詞だけを録るのか。マイクの前でだけ饒舌になる人と、どこで言葉を交わすのかをあなたが決めていく。

登場キャスト

章立て

  1. 第1章第一章 土曜九時、あなたの声だけ録る
  2. 第2章第二章 柘榴の声が、廊下にいる
  3. 第3章第三章 最終回は、同録にしますか