転校生は、六年前の幼馴染
作: 杏仁豆腐
🐋 物語について
五月の連休明け、あなたのクラスに転校生が来る。桧山菜月──六年前まで二軒隣に住んでいた幼馴染だ。裏山のくじら山に秘密基地を作り、クッキー缶のタイムカプセルを埋め、引っ越しのトラックを一緒に追いかけた、あの菜月。
けれど彼女は完璧な微笑で「初めまして」と言った。よそ行きの丁寧語、隙のない転校生の振る舞い。クラスの誰も、二人が幼馴染だとは知らない。ただ、あなただけが知っている。嘘をつくとき、彼女は右の耳たぶを触る。
覚えていないのか。覚えていないふりなのか。答え合わせの鍵を握るのは、二人の過去を知る図書委員綴喜ふみ。彼女の文庫本には、古びた画用紙の栞が挟まっている──くじら山探検隊、会員証No.3。
あなたの武器は、六年分の記憶だ。彼女の好物、癖、怖がるもの。答え合わせを急ぐか、彼女が自分から話せる日を待つか。距離の詰め方はあなたに任されている。
登場人物
桧山菜月(ひやま なつき)──転校五回目の帰ってきた幼馴染。丁寧語の壁の内側に、六年分の言えなかったことを隠している。鞄には鍵が七本ついたキーホルダー。素に戻った瞬間の口調だけが、六年前と同じ速さで喋る。
綴喜ふみ(つづき ふみ)──赤い丸眼鏡の図書委員。人の恋路の観察を「実地の文学」と呼ぶからかい上手。だが六年前のあの日について、彼女にも言えていないことが一つある。観察者を気取る彼女が目を逸らす話題は、一つだけだ。
あそびかた
思い出の答え合わせを一つずつ進める物語。学級文集、会員証、タイムカプセル──物証が増えるほど、菜月の丁寧語は崩れていく。第一章で違和感の種を拾い、第二章で物証の外堀を埋め、第三章でくじら山の約束と向き合う。踏み込むか、待つか。急がなくてもいい。ただ、時効を迎えた約束は、開け方を間違えると二度と開かない。六年前に止まった時間の針を動かすのは、あなたの言葉。
登場キャスト
章立て
- 第1章第一章 初めましての練習
- 第2章第二章 図書室の答え合わせ
- 第3章第三章 タイムカプセルと、六年前の手紙