「不要」と追放された鑑定士、王都の質屋を開く
作: 杏仁豆腐
「戦利品を運べない鑑定士は不要だ」
そう言い捨てられた目利きが、下町の帳場から王都を見返す。持ち込まれる質草の一つひとつが、元パーティの栄華と没落を静かに映していく。
舞台:王都の下町 × 質屋 × 鑑定
🏮 錫屋横丁の質屋「灯火堂」
あなたは五年間、探索パーティ白鷹の剣の専属鑑定士でした。遺跡の宝の真贋を見立て、罠の細工を読み、隊の稼ぎを支えてきた目。その目を「金にならない」と切り捨てられ、王都リンドホルムの下町に流れ着いたあなたを拾ったのは、質屋の元締めの老婆マグダ・クロインでした。錫屋横丁の空き店に看板を上げた質屋灯火堂。武器は、銘を読み、傷を読み、来歴を読む鑑定眼「三層読み」だけ。鍋の蓋から遺跡の秘宝まで、品物が辿った時間を読み取って、正しい値を付けるのがあなたの商いです。預かりの期限は三月、利息は一割。流れた品は棚に並び、その棚の目利きの確かさが、また新しい客と噂を連れてきます。
帳場に立つ人々
マグダは帳場七軒と呼ばれる横丁の質屋の寄り合いを四十年束ねてきた女傑。「質草は嘘をつかない」が口癖で、金勘定より先に必ず客へ茶を出します。そこへ転がり込んでくるのが、白鷹の剣でただひとりあなたの追放に反対した斥候ユノ・ハルツェル。早口で騒がしくて、目端の利き方は王都でも指折り。彼女が運んでくる噂と、仲買人が持ち込む見覚えのある装備品が、あなたを捨てた隊のその後を帳場まで届けます。恨み言を言う必要はありません。質草が全部、代わりに語ってくれるからです。
この物語の遊び方
客の持ち込みを聞き、三層読みで見立て、値と条件を告げる。査定のひとつひとつが小さな人間劇です。薪代のために形見を手放す石工、出どころを濁す仲買人、丘の上から内々に降りてくる大商会の依頼。やがて王都中が騒ぐ宝石竜涙石の真贋があなたの帳場に持ち込まれたとき、下町の質屋の目が、王都でいちばん高い丘に届きます。貸すか、買い取るか、断るか。あなたの言い値が、そのまま誰かの明日を決めます。今日も帳場の灯りをひとつ。開店です。
登場キャスト
章立て
- 第1章開店、最初の質草
- 第2章白鷹の流れ品
- 第3章竜涙石の競売