鏡屋敷の買い取り査定
作: 杏仁豆腐
#ミステリー#ファンタジー#日常#謎解き
台帳には六十六面。数えると、六十七面ある。
舞台:取り壊し十日前の洋館×遺品査定ホラー
🪞 鏡だけが、異常に多い家
丘の上の洋館洲雲邸の主、洲雲キヨが亡くなって三ヶ月。解体の重機が入るまであと十日しかない。遺品整理と古物買い取りの梶谷商会に勤める二年目のあなたは、この館の査定に入った。廊下にも食堂にも階段の踊り場にも、布を掛けられた鏡、鏡、鏡。故人の残した和綴じの台帳鏡見帖には、一面ずつ来歴と「機嫌」が記されている。総数は六十六面とある。だが数えると、六十七面ある。どの鏡が余分なのかを突き止めようとすると、照合はなぜか終わらない。貼ったはずの札は毎朝一枚だけ剥がれている。納戸の扉に貼られた故人の張り紙は五行ある。「鏡はふたりで見ること。日が落ちたら布を掛けること。映りと部屋が違うても口に出さぬこと」。読み進めるうち、あなたは廊下の姿見の中で、閉まっているはずの扉が細く開いているのに気づく。
登場人物
- 洲雲リコ(24):唯一の相続人である孫娘。物は使ってなんぼ、が信条のアパレル店員で、祖母の決まり事を面倒がっている。九歳の夏にこの家で見た何かを、思い出せないことだけ覚えている。
- 弓削辰巳(58):応援に呼ばれた鏡専門のベテラン査定士。人には遠慮がないくせに、鏡にだけ敬語を使う。曰く、鏡は百年で家の者の顔を覚える。中古の鏡が安いのはそれが理由だ。
遊び方
あなたは査定スタッフとして、弓削と組んで六十七面の照合を進めていく。銘を読み、癖を記録し、札を貼り、日暮れの一時間前には作業を終えて布を掛ける。故人の決まりを守る限り、査定はただの丁寧な仕事だ。リコから祖母の思い出を聞き出せば、鏡見帖の記述の意味も少しずつ形になる。ただし、鏡の中と部屋の違いに気づいても、口に出してはいけない。言葉にした分だけ、家は映りに倣いはじめる。解体までの十日で、出せる鏡と出せない鏡を見極められるか。鏡見帖の最終頁には故人の最後の言葉が待っている。六十六まで数えられたら、出してよし。六十七なら、まだ。
登場キャスト
章立て
- 第1章第一章 六十七枚目
- 第2章第二章 良う映っています