闘技場の治し屋
作: 杏仁豆腐
歓声の裏で、体は嘘をつかない。
剣闘士専属の治癒師が見る、闘技場の光と、その裏側の物語。
舞台:円環都市の大闘技場 × 治癒師の針 × 興行の裏側
🏟️ 白い砂と、光の糸
円環都市サルデアの中心には、五万人を呑む大円技場がそびえています。あなたは縫い手。光の糸で傷を縫い閉じる治癒師で、このたび看板剣闘士の専属に雇われました。ただし縫い手の術には代価があります。縫った傷の痛みの影が写りとなって自分の体に残るのです。誰の傷を、どこまで縫うか。針を持つ手には、いつもその勘定がついて回ります。糸を通せば傷の奥まで手に取るように分かり、深手も命を繋げられる。ただし、すり減った軟骨と積もった年月だけは縫えません。それは傷ではなく、その人の生きてきた時間だからです。
不倒の男と、帳簿の娘
あなたの患者はヴァリオ・スカーラ。十一年砂に背中を付けていない「不倒のヴァリオ」です。観客の前では雷のように笑う男が、控え室では静かに右膝の包帯を隠す。その体はとうに限界で、しかも彼の血からは、痛みを消す灰蜜の甘い痺れが見つかります。誰が、何のために。帳場を取り仕切るのは興行主の一人娘ペトラ・ジグモンド。数字で話し数字で黙らせる帳簿の主ですが、その単眼鏡の奥で、彼女もまた別の勘定を隠しています。前任の専属縫い手は理由も告げずに街を消え、引き継ぎ帳には破り取られたような空白がある。そして年に一度の大祭がひと月後に迫り、挑戦者は二十二連勝の若者、鉄鎖のガドヴァです。
🩹 この物語の遊び方
試合のたびに傷が運ばれてきます。縫うか、休ませるか、写りをどこまで引き受けるか。治し屋の判断が選手の命と興行の金勘定の間で軋みます。やがて帳場からは筋書きどおりに倒れろという台本が降りてくる。誰の側に立ち、何を治すのか。針と帳簿と歓声の三つ巴の中で、あなたの答えを見つけてください。写りの疼きは、あなたが引き受けた誰かの痛みの重さそのもの。治療も診断も、誰に何を告げるかも、すべてはあなたの針次第です。
登場キャスト
章立て
- 第1章白砂と縫い針
- 第2章五回目で倒れろ
- 第3章大祭の白い砂