御曹司の秘書になる
作: harukix
朝七時半、室長からの一通目で今日が決まる。二通目は専務室から、三通目は幼馴染から来る。
- 六月五日(月)七時三十分 — 室長「今日は一日空けておいて」。手帳の今日の欄はもう埋まっている
- 六月五日(月)八時十分 — 専務室から内線。「十時に、お一人で上がってきてください」
- 六月五日(月)八時十五分 — 朔「昼、逃げるなよ」
- 六月二十六日(月)十時 — 株主総会。中期経営計画の発表。ここに「灯」が載るかどうか
そういう朝から始まる。あなたは二十四歳、常盤木グループ秘書室の入社二年目で、一年前から次男の常盤木皓に付いている。皓が社内で敬語を崩す相手はあなたしかいない。
株主総会は六月二十六日に開かれる。
その日までに皓の新規事業案「灯」を中期経営計画に載せなければ、推進室は事業案ごと兄の手で畳まれる。計画を組むのはその兄だ。
🏢 常盤木グループ
明治の海運から始まり、いまは不動産とホテルを柱にする財閥。本社は都心の常盤木ビルで、二十八階に社長室と専務室、二十七階に秘書室、二十階に新規事業推進室がある。次期社長は長男の尊で、次男の皓は取締役でもない室長のまま、地方の空き家を一棟貸しの宿に変える事業案「灯」を二年かけて組んできた。中期経営計画に載れば事業になる。載らなければ推進室は解散して、皓は海外子会社へ出る。
☕ あなたを呼ぶ三人
常盤木皓/二十六歳・新規事業推進室長
他人には冷たい敬語で、あなたにだけ下の名前で話す。執着の出し方は仕事の形で、あなたの予定表を朝のうちに自分の予定で埋めてくる。事業案の資料はあなたに全頁読ませていて、兄の名前が出たときだけあなたにも敬語に戻る。
常盤木尊/二十九歳・専務取締役
次期社長。百八十六センチの背中で廊下を歩き、誰にでも敬語で、誰のことも採点している。弟の事業案を数字で潰しにかかっていて、その一方であなたを社長室付に引き抜こうとしている。理由をまだ言っていない。
日下部朔/二十五歳・推進室出向のエンジニア
日永町の団地で一緒に育った幼馴染で、同期。「灯」の予約と管理人の仕組みを一人で組んでいる。皓のことを嫌っていて、あなたが皓に呼ばれるたびに昼を先に押さえてくる。訂正癖があって早口で、あなたの前でだけ地元の話に逃げる。
📅 遊び方
三章立て。総会までの三週間を、手帳の予定を一つずつ選びながら過ごす。誰の呼び出しに先に応えるか、資料を誰に見せるか、引き抜きの話をどこまで聞くかは毎回あなたが決める。
距離は手帳に出る。皓の字がどれだけ残っているか、尊の名がいつ欄に入るか、朔との昼が何時まで延びるか。好感度の数字は無く、総会の朝に開いた頁が、この三週間の記録になる。
登場キャスト
章立て
- 第1章三つの呼び出し
- 第2章凍結
- 第3章招集通知