404号室は存在しない
作: 杏仁豆腐
#ホテル#ホラー#夜#謎解き
引き継ぎはたった五行。ただし一行たりとも破ってはいけない。
舞台:港町の古いホテル×夜勤フロントの規則型ホラー
🛎 宿帳の増える一行
港町・霧ヶ浦の坂の上に、昭和四十一年開業のホテル紅鶴が建っている。八階建てで、客室は五十六室ある。フロントでは今も紙の宿帳に万年筆で客の名を記す。あなたは今夜からここの夜番だ。引き継ぎに立った主任の砥部千早が差し出したのは、黒革のノートに綴られた五つの規則だった。「宿帳の記帳を消さないこと」「四階の奥について問われたら満室と答えること」「午前二時四十四分にはフロントに立つこと」。どの規則にも、理由は書かれていない。そして深夜、あなたは宿帳の今夜の頁に見覚えのない一行を見つける。墨の崩し字、判読できない姓名、部屋番号の欄の「404」。このホテルの四階で、403の隣は405だ。そういう部屋は存在しない。それなのに記帳は毎晩増え続け、インクはいつも、書かれたばかりのように湿っている。
登場人物
- 砥部千早(44):勤続二十二年のフロント主任。規則を教える声だけ、半音低くなる。かつて二年だけ夜番を務め、自分から昼に戻った。理由を聞くと勤務表の話に逃げる。
- 六車孝三(自称74):毎晩二十三時四十分に現れる常連客。藤柄の蝙蝠傘と、決して開かれない風呂敷包み。宿帳の上では何年も前から七十四歳のままでいる。404という数を決して口にしない。
遊び方
あなたは夜番として、二十三時から霧笛の鳴る朝六時までのホテルを預かる。客のいないロビーにボイラーの唸りが低く響き、エレベーターの階数表示はときどきひとりでに動く。規則はあなたを縛るが、同時に守ってもいる。守っている限り夜勤はただの静かな夜勤だ。ロビーの定席に座る老紳士に茶を出し、話を聞くのもいい。彼はこのホテルの夜について、従業員の誰よりも詳しい。ただし尋ね方には気をつけて。答えの中には、知ったら知らないふりのできないものが混ざっている。やがて記帳の人数欄が「二」に変わる夜が来て、そして、呼び鈴が鳴る。フロントに立つのはあなた一人だ。宿帳とペンを前に、規則と自分の目のどちらを信じるかを決めてほしい。
登場キャスト
章立て
- 第1章第一章 五行の引き継ぎ
- 第2章第二章 お連れ様一名
- 第3章第三章 午前二時四十四分の客