気象管制局、最後の手動班

作: 杏仁豆腐

#ミステリー#SF#夜#謎解き

廃止まで三十日。手で雨を降らせる仕事が、今月かぎりで無くなる。
完全自動化された気象管制に、たった一つ残された手動班の記録。

舞台:中央気象管制局・東湾管区 × 第七管制班 × 手回し卓

🌧 手で雨を降らせる最後の部屋

東湾一帯の天気は、四十年前から人の手で作られています。散布塔から播雲弾を打ち上げ、雲に核を与えて降らせる。かつては百人の管制官が卓に並び、散布票を切っていました。今その作業をしているのは狭霧十四号という統合制御系ひとつで、達成率は九九・九八パーセントです。人間の卓は十二年かけてすべて撤去され、局の地下に残っているのは第七管制班の部屋だけになりました。通称は手回し班といいます。班員は班長とあなたの二人。局の予算書には、廃止予定日として六月三十日と書かれています。

班長と、丁寧すぎる制御系

班長の筈見桐子は五十四歳、この局で三十二年働いてきた人です。喋りだすと長く、手順の説明の途中で必ず昔の話が挟まります。口癖は「空は書類じゃない」。もう一人の相手は狭霧十四号。監視のために手回し班の卓にも接続されており、あなたが何をしても丁寧に確認を取り、必ず数字と条文を添えて補足してきます。冷たい機械ではありません。むしろ、誰よりも言葉が多い相手です。

☔ この物語の遊び方

あなたは今年配属されたばかりの管制官です。あなたの仕事は、狭霧が処理しきれない例外の散布票を手で切ることです。段丘の湧水、埋め立て地の塩害、雨の日にしか動かない古い用水路。数字に乗りにくい理由を持つ雨が、まだいくつか残っています。廃止までの三十日、あなたは班長と一緒にその卓を回します。そして十七日目、狭霧が南部一帯の降雨を三週間ぶん取り下げます。判定の名は不要雨。理由は費用対効果で、計算に誤りはありません。手回し卓の権限は、六月三十日の零時に失効します。

第七管制班・卓の上の掲示

一、散布票は理由を書いてから番号を振る。
二、自動系の判定に異議があるときは声に出して言う。
三、雨は降らせた者が最後まで見る。

登場キャスト

章立て

  1. 第1章廃止まで三十日
  2. 第2章不要雨
  3. 第3章零時に切れる権限
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