将棋部、一手目の約束
作: 杏仁豆腐
#ロマンス#学園#日常#現代#高校生
「掃除も記録も作題もやります。ただ、勝負の将棋はもう指しません」
舞台:県立榧森高校・旧視聴覚室の将棋部 × 廃部まで五十日
♟ 物語について
あなたは県立榧森高校二年、将棋部でただ一人残った部長である。去年の三年生が抜けて部員は自分だけになり、部活動規程の判定日である七月一日までに三名を揃えなければ、部は同好会に落ちてそのまま消える。校舎北端の旧視聴覚室には、二十年前に卒業生が寄贈した榧の一枚板の盤が一面だけ残っている。毎日それを拭いて、誰も来ない四十分を過ごすのが四月の日課だった。
五月の連休明け、その日課が壊れる。顧問に首根っこを掴まれて部室へ運び込まれた転入生は、盤の木口を見ただけで「二十年、ちゃんと拭かれてる盤です」と言い当てた。笹貫累、元奨励会員。十歳で入会し、十五歳で二段まで上がり、去年の暮れに自分から退会届を出した男である。彼は入部を即決した。そして駒袋の紐を解きながら、勝負の将棋は指さないと言った。
登場人物
笹貫累(かしお るい)──二年・転入生。丁寧で低い声、詰将棋の作題が生活の中心。教えることには惜しみなく時間を使うのに、対局の申し込みだけは静かに断る。同期だった羽鳥数馬の最後の一局に、その理由がある。
鵤万里子(いかるが まりこ)──三十歳・現代文教諭・顧問歴七年。学生時代にアマチュア全国大会で八強。声が大きく、廊下でも将棋の言葉で喋り、悩んでいる生徒を見ると先に手を引っ張る。盤と駒を粗末に扱う者にだけ、本気で怒る。
あそびかた
第一章は部員二人での再出発。第二章は三人目を探しながら、指さない部員を抱えた部がどう見られるかに向き合う。第三章は県高校将棋選手権の団体戦エントリーと、累が出したただ一つの条件。棋力は問われない。相手が指すまで待てるかどうかだけが問われる部室で、あなたはどんな初手を選ぶだろうか。
登場キャスト
章立て
- 第1章駒音のしない部室
- 第2章十一手詰めの貼り紙
- 第3章一手目はあなたが決める