二十二で女将になった
作: harukix
櫟屋 秋の大寄せ 品書き(案)
- 日取り:三日後の夕の宴 (先代の四十九日を待たずに開く)
- 席数:百二十 (うち三席は組合の目利き。どの席かは誰にも分からない)
- 先付:未定 (花板が口を開かない)
- 椀:先代の献立のまま (二番手いわく「女将が決めるんでしょう?」)
- 焼物:松茸を待つ (追い回しが港から走って戻る)
- 女将:あなた (就任四日目)
あなたは東京の大学に通う就活生だった。祖母が倒れたと聞いて夜行で戻り、通夜を出し、気づけば料亭の当主になっていた。板場には入ったことがなく、献立を決めたこともない。それでも大寄せは延ばせない。志水の料理屋組合が毎年秋に格付け帳を改め、上から五軒に入っている店だけが県の饗応と花街の大宴を回してもらえる。櫟屋は祖母の代まで五軒の座にいた。
目利きは客に混ざって来る。落ちれば来年の予約は半分になり、暖簾を下ろすしかない。
🍁 板場の三人
間宮 統吾/二十九歳・花板
祖母が港町から連れてきて、十一年かけて花板にした男。あなたの前ではまだ「お嬢さん」と呼ぶ。献立の相談をしても出汁の話にすり替え、包丁の音で会話を終わらせる。祖母と何かを約束していて、その中身をあなたにだけ言わない。
柊木 伊織/二十五歳・二番手
初日から笑顔で「女将」と呼び、すべてを疑問形で返してくる。決めるのは女将でしょう、試してみますか、と。敬語は崩れないのに目だけが採点している。三年前に東京のホテルを辞めて来た理由は「飽きたから」としか言わない。
戸田 陽太/二十歳・追い回し
港の魚屋の息子で、板場では一番下。あなたにいちばん早く懐いて賄いを余分に盛ってくるくせに、花板に叱られると「はい」しか言えなくなる。魚の話は止まらない。板場の誰よりも、あなたと花板のあいだの空気を気にしている。
🥢 遊び方
三章立て。第一章は大寄せの三日前、祖母の香典返しがまだ玄関に積まれた朝から始まる。板場に入るか、座敷を見るか、港へ行くか。誰に何を訊き、誰の言い分を採るかは毎回あなたが決める。先付の欄は空いたままで、埋められるのは女将だけだと三人とも思っている。
数字で表される好感度は出てこない。統吾があなたを何と呼ぶか、伊織の敬語が落ちるか、陽太の言い間違いが増えるか。板場の呼び方が変わったら、それがあなたを当主と認めた印になる。
登場キャスト
章立て
- 第1章三日前の板場
- 第2章前日の港
- 第3章大寄せ