隣人は、壁の中
作: 杏仁豆腐
#ホラー#アパート#ミステリー#夜#日常
二回なら、返してあげて。三回なら、いないふり。
舞台:築四十九年のアパート×隣人ホラー
🚪 四つのお願い
家賃二万八千円、敷金礼金なし。郊外の木造アパートかもめ荘の204号室に、あなたは越してきた。中庭の金木犀が香る、静かでいい部屋だ。入居の日、管理人の百目鬼静はお茶と漬物を出しながら、世間話と同じ調子で四つのお願いを口にする。二回のノックには二回返す。三回のときはいないふり。壁に耳を当てず、203号室の前では立ち止まらない。隣の203は、誰も住んでいないはずの空室だ。それなのに毎月末、管理人室の郵便受けには古い千円札で二万三千円、宛名のない家賃が届く。カーテンは四十九年間、日に焼けていない。夜、壁の向こうから聞こえるノックは、乾いて、低くて、正確に等間隔だ。まるで律儀な隣人の挨拶のように。
登場人物
- 百目鬼静(76):住み込み四十九年の管理人。壁の向こうを「お隣さん」と呼び、悪く言う言葉を決して使わない。困った入居者のためには、硯箱を出して毛筆の詫び状を書く。
- 鮫洲ワタル(26):中庭を挟んだ向かいの201号室の住人。工場夜勤明けの目つきの悪い青年だが、規則には誰より律儀だ。六年前には204号室で「四回目」を経験している。
遊び方
あなたは新しい入居者として、この部屋の暮らしと規則に慣れていく。夜のノックに正しく応え、203の前は立ち止まらずに歩き、朝は管理人の漬物をもらう。それだけ守れば、かもめ荘の日々は驚くほど穏やかだ。分からないことは向かいの鮫洲に聞くといい。彼のカタカナだらけのノートには、九年分のノックの記録がある。だが人は眠る。眠れば寝言も言う。うっかり返事をしてしまった夜から、ノックの聞こえる場所は少しずつ変わりはじめる。壁から押入れへ。押入れから天井へ。管理人の詫び状が効かなかったとき、最後に残る手段は何か。玄関の内側に立って、確かめてほしい。
登場キャスト
章立て
- 第1章第一章 お茶と四つのお願い
- 第2章第二章 寝言
- 第3章第三章 四回目