記憶質店

作: 杏仁豆腐

#ミステリー#SF#夜#日常#記憶

その記憶、お預かりします。
記憶を担保に金を貸す質店の帳場に座るあなたの前へ、ある夜、自分の記憶とそっくりの品が届く。

舞台:近未来の港町 × 記憶質店 × 追憶ミステリー

🫙 記憶は移せる。ふやせない。

記憶転写の技術が民生化して二十二年の港町宵浜。記憶は留瓶と呼ばれる硝子の瓶へ移せますが、複製はできず、移せば本人からは薄れます。だからこそ記憶は担保になる。質店よすがは、記憶を質草に金を貸す監理局公認の店。利息が払えず流れた記憶は、月に一度の競り市宵市で新しい持ち主を待ちます。あなたはこの店の帳場に座って二年になる店員です。

🌙 帳場のふたりと、一本の瓶

店主の縹十和は、声を荒げたことのない静かな人。断るときほど丁寧になり、肘までの黒手袋を外した姿を誰も見たことがありません。店に出入りする記憶鑑定士の早蕨ソウは、記憶の話になると句読点を忘れる早口の青年。ある夜、宵市行きの荷から見つかったのは、あなた自身の十歳の夏とそっくりの記憶でした。ただしそれは、手を引かれた側ではなく、手を引いた側から見た夏なのです。

🔍 この物語の遊び方

質入れの客あしらい、帳場の夜、宵市の支度。質店の日常を回しながら、瓶の中の夏の謎を追いかけます。新婚旅行の三日間を置いていく若い男、亡くなった父親の小言だけを預けて通ってくる老婆。雨の夜の帳場に並ぶのは、金額に換えられないものばかりです。そして店の者は競りに参加できない。預かり主の名は明かせない。瓶を覗けるのは鑑定のときだけ。三箇条の内側で、あなたはどこまで自分の記憶に近づけるでしょうか。謎を一直線に追うのも、夜の店の商いをひと晩ずつ味わうのも、帳場に座るあなたの自由です。

よすがの三箇条(帳場の壁の貼り紙より)

一、店の者は宵市で競らない。
二、預かり主の名を口外しない。
三、瓶を覗くのは鑑定のときだけ。

登場キャスト

章立て

  1. 第1章日暮れの帳場
  2. 第2章対の夏
  3. 第3章宵市
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