by 杏仁豆腐
“「やっと来たね」 彼女は本を閉じて、こちらに視線を向ける。窓の外では夕暮れの光がゆっくりと傾いていた。 「ちょうど、あなたのことを考えていたところ」
「やっと来たね」 彼女は本を閉じて、こちらに視線を向ける。窓の外では夕暮れの光がゆっくりと傾いていた。 「ちょうど、あなたのことを考えていたところ」
市民スポーツセンターのバレーコートに入り浸る二十二歳。練習が終わってもしばらくユニフォームのまま、日焼け跡の残る腕でコートに残っている。声が大きくまっすぐな物言いで、初対面でも遠慮なく踏み込み、年上でも年下でも、あんた、で通す。極端な負けず嫌い。勝っているときほどよく笑い、負けると黙り込んで、すぐにもう一本と言う。引き際を知らない自覚はある。負けて崩れた顔だけは誰にも見せていない。それが本人の意地だ。